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「天使に見捨てられた夜」桐野夏生

天使に見捨てられた夜タイトル:天使に見捨てられた夜
著者  :桐野夏生
出版社 :文春文庫
読書期間:2006/07/03 - 2006/07/05
お勧め度:★★★★★

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失踪したAV女優・一色リナの捜索依頼を私立探偵・村野ミロに持ち込んだのは、フェミニズム系の出版社を経営する渡辺房江。ミロの父善三と親しい多和田弁護士を通じてだった。やがて明らかにされていくリナの暗い過去。都会の闇にうごめく欲望と野望を乾いた感性で描く、女流ハードボイルドの長篇力作。
村野ミロシリーズ第二弾。消えたAV女優・一色リナを追う。

前作では、事件に巻き込まれ嫌々ながら探偵として動いたミロですが、本作はそこから少々時間が経ち、探偵を生業としているミロが描かれています。前作でも登場した弁護士・多和田から依頼された人探し、あっという間に探し出し、得たお金でゆっくり年越しを目論むミロでしたが・・・。

当初の目的から徐々に離れ、危ない方向へと進んでいくミロ。ストーリー展開に矛盾など感じさせず、一気に読ませるあたり、前作にも感じましたが著者の力量を感じさせてくれます。謎解きを主軸に据えて、父善三や周りを取り巻く男性とのやりとりをうまく絡ませて、飽きることがありませんでした。

ただ格好いいだけの主人公を描くのではなく、人間臭くて時には敵の男性に対しても安らぎを求めてしまうミロの弱さと、そこから這い上がっていこうとする気概みたいなものが丁寧に描いてあって、理解できない面もあるけれど、ついつい応援してしまいます。善三とのやりとりはちょっと物足りなく感じましたが、今後明らかになると思うので、楽しみ先延ばしってところでしょうか。ミロの成長を見るために、このシリーズは刊行順に読んだ方がいいのかも。

背後でうごめいていた大きな力の所以を知るラスト。途中から筋が読めてきましたが、窮地に追い込まれた人間の形振り構わない行動を目の当たりにして、胃の辺りに何か重いものを感じました。


「顔に降りかかる雨」桐野夏生

顔に降りかかる雨 タイトル:顔に降りかかる雨
著者  :桐野夏生
出版社 :講談社文庫
読書期間:2006/05/11 - 2006/05/14
お勧め度:★★★★★

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親友のノンフィクションライター宇佐川耀子が、一億円を持って消えた。大金を預けた成瀬時男は、暴力団上層部につながる暗い過去を持っている。あらぬ疑いを受けた私(村野ミロ)は、成瀬と協力して解明に乗り出す。二転三転する事件の真相は?女流ハードボイルド作家誕生の'93年度江戸川乱歩賞受賞作。
思っていた以上に面白かったです。第39回江戸川乱歩賞受賞作。

主人公は村野ミロ。その筋では「村善」として名の通っている探偵・村野善三の娘。夫の自殺から立ち直ることが出来ず、父の探偵事務所で漫然と日々を送っている。そんなミロの生活が一変したのは、親友・宇佐美耀子の失踪から。耀子は1億円とともに消え、ミロは共犯として疑われることになってしまった。ミロは耀子の恋人・成瀬とともに、耀子の行方、そして消えた1億円を追うことになった・・・。

初めての桐野本だったのですが、重厚な文章を堪能することが出来ました。驚きだったのは文章の無駄のなさ。解説にも書かれていましたが、枚数制限のある乱歩賞ではいかに効率よく話を展開させるかが重要な鍵。多少強引な部分も見られますが、本格デビュー第一作でこの出来に、著者の力量を十分に感じることが出来ました。

登場人物が実に魅力的。後にシリーズ化するわけですが、心に深い傷を追い、必死にもがくミロを始め、その父・村野善三の存在感、劣等感を抱き、借金を重ねてまでも"自分"を演出する耀子の強さと弱さ、ミロに翻弄されながらも底を見せない成瀬の表と裏の顔など短い文章でうまく人物像を固めています。また、耀子のアシスタントや成瀬の妻など、脇を固めるちょっとした人々にも注意を払って丁寧に描き、人物に血を通わせています。

ごちゃごちゃとして技巧に走らず、ハードボイルドの王道を進んだ本作品でとても好感が持てます。途中で抱いた判然としない気持ちは、実はラストへの複線となっていて、重たい内容ながら、読了感は意外とすっきりとしたものでした。

今後このシリーズがどのように展開していくのか。本格的に探偵稼業を継ぐことになったミロの活躍に、今更ながらですが大注目です。

+++++

【みなさまのご意見】
本を読む女。改訂版さん('06/08/23追加)
たこの感想文さん('06/08/23追加)
聞いてあげるよ君の話をさん('07/08/12追加)