

タイトル:柔らかな頬
著者 :桐野夏生
出版社 :文藝春秋
読書期間:2008/03/03 - 2008/03/07
お勧め度:★★★★
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カスミは、故郷・北海道を捨てた。が、皮肉にも、北海道で幼い娘が謎の失踪を遂げる。罪悪感に苦しむカスミ。実は、夫の友人・石山に招かれた別荘で、カスミと石山は家族の目を盗み、逢引きを重ねていたのだ。カスミは一人、娘を探し続ける。4年後、元刑事の内海が再捜査を申し出るまでは。話題の直木賞受賞作ついに文庫化。(上巻)
野心家で強引な内海も、苦しみの渦中にあった。ガンで余命半年と宣告されたのだ。内海とカスミは、事件の関係者を訪ね歩く。残された時間のない内海は、真相とも妄想ともつかぬ夢を見始める。そして二人は、カスミの故郷に辿れ着いた。真実という名のゴールを追い続ける人間の強さと輝きを描き切った最高傑作。(下巻)
第121回(1999年)直木賞受賞作。
お互い家族を伴って北海道への不倫旅行。カスミと石山が家族の目を盗んで逢引きしていた合間に、カスミの娘・有香は謎の失踪を遂げる。カスミは一人で娘を探し続けるのだが、4年後元刑事・内海がカスミの手助けを買って出た。
手が届きそうで手が届かない真相。カスミと内海の見た夢に何度真相はこれかと思わされたことでしょう。期待しては裏切られることの連続でしたが、どんどん引き込まれてゆきました。
一つの事件をきっかけにそれに纏わる人々の心の裏側が見事に描かれています。カスミの愛人・石山や元刑事・内海はもちろんのこと、別荘のオーナー・和泉とその妻、別荘の管理人・水島など、ひと癖もふた癖もある登場人物たちが、作中で非常に生き生きと動き回っています。
「OUT」に引き続き、普通の生活をしている一般庶民が、ちょっとしたことで日常から外れた世界へと簡単に転げ落ちてしまう内容でした。非常に重たいテーマで読後には疲労感たっぷりでしたが、直木賞も納得の一冊です。
ラストには賛否両論だと思います。明確に示されていたらすっきりしたことでしょう。ただ、僕はこれでよかったのではないかと。「誰でもちょっとしたことで、犯人になる可能性はある」。そう考えることにしました。