タイトル:タンノイのエジンバラ
著者 :長嶋有
出版社 :文藝春秋
読書期間:2007/09/06 - 2007/09/09
お勧め度:★★★
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「なんか誘拐みたいだね。脅迫状書いてよ」「嫌だよ。おまえが俺を脅迫してるんじゃないか」 失業中の俺が預かるはめになった隣家の女の子。何をしても不満気な彼女だが、スピーカーから歌が流れ出した時…。全4篇の短編集。
芥川賞受賞作「猛スピードで母は」が期待以上に面白かったので、この本を手にとって見ました。表題作「タンノイのエジンバラ」他、「夜のあぐら」「バルセロナの印象」「三十歳」の計四編が収録されています。
四編とも緊張感のない、気だるい雰囲気が漂っています。表題作「タンノイのエジンバラ」は、隣家の母親から娘の面倒を頼まれた失業中の主人公と娘の心の交流の話。歳が離れた二人の会話のギャップが面白い。特に何をしているわけでもないんだけど、この娘にとっては忘れられない思い出の一つになりそうな、そんな予感がします。
表題作のほかには、死が迫っている父の金庫を盗み出し、後妻の手から家屋敷を奪おうとする姉妹を描いた「夜のあぐら」、猫が行方不明になって気落ちする姉を連れて、妻とバルセロナを訪れた男の目を通し、その土地での出来事を淡々と綴る「バルセロナの印象」、母の形見のグランドピアノの下で寝起きをしているパチンコ屋店員が主人公の「三十歳」。
それぞれに問題を抱える主人公たちですが、どのお話もそんなの重要な問題ではないようなさっぱりとしたラストを迎えます。それが少々物足りなく感じました。「猛スピードで母は」「サイドカーに犬」のようにストーリーに抑揚があるお話の方が好みです。