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「破線のマリス」野沢尚

破線のマリスタイトル:破線のマリス
著者  :野沢尚
出版社 :講談社文庫
読書期間:2007/06/05 - 2007/06/07
お勧め度:★★★★

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首都テレビ報道局のニュース番組で映像編集を担う遠藤瑤子は、虚実の狭間を縫うモンタージュを駆使し、刺激的な画面を創りだす。彼女を待ち受けていたのは、自ら仕掛けた視覚の罠だった!?事故か、他殺か、一本のビデオから始まる、超一級の「フー&ホワイダニット」。第43回江戸川乱歩賞受賞の傑作ミステリ。

「破線」はテレビの走査線、「マリス」とは英語で悪意を意味します。ニュース番組の裏側で起こる映像編集という名の情報操作。編集担当・遠藤瑤子の身に降りかかるのは、いつも自分が作り上げている刺激的な映像の罠でした。

大学助教授の一家が惨殺された事件が発生。瑤子は、証言を元に推論を組み立て、それに合う画を作り上げて番組で放送します。そのおかげで事件は解決。しかし、編集者として明らかに逸脱した行為です。ただ、事件が解決したという結果を見せられて、誰も反論が出来ません。この行為で瑤子は、自分がニュースの主人公だ、自分の推理こそが正しいのだ、という驕りが芽生えてしまったのでしょう。春名という男から郵政官僚の犯罪を内部告発するというテープを受け取った瑶子は、そこから1つのストーリーを創作し、テープの映像を何も疑わずにニュースで流してしまいます。

告発テープの中で明らかに犯人と目された男を、関係者が見れば誰でも個人を特定出来るほどに編集して放映します。それが元で、職場で居場所をなくし、左遷されることが決まったこの男は、瑶子に執拗に付き纏い、自分の身の潔白を申し立て、謝罪を要求します。そんな中、瑶子のもとへ瑶子の日常を盗撮したテープが届くようになり、さらには、瑶子に告発テープを渡した春名が死体になって発見され、男への猜疑心がどんどん募っていきます。

冒頭からずっと緊迫感が張り詰めていて、ひどく息苦しい感覚がしました。命綱をつけない綱渡りのように、ちょっとバランスを崩せば地面に真っ逆さまで命がない。そんな感覚です。瑤子にとっては、それが日常なのかもしれませんが、僕ならこんな日常は耐えられないだろうと思います。

ストーリーの展開として、瑶子が罠にはめた人物を探し出して復讐を遂げる、というのを予想していましたが、まったく違いました。善と悪を判断できなくなった瑶子が、みじめなまでに取り乱す様子を執拗なくらい丁寧に描き連ねます。編集で真実を描き出そうとしていた瑤子が、一切編集のない、素のテープで追い詰められていくのは、皮肉としかいいようがありません。

仮にもプロである瑤子が、何の検証もせず見ず知らずの人から受け取った映像を信じ込むか。この点についてはもう少し説明が欲しいところでしたが、この本を読んでわれわれニュースを見る側の人間にも、物事を疑うまなざしが必要だと強く感じました。

活躍が期待される中、2004年に自殺した著者。新作がもう読めないのはとても残念です。


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comment

すべての伏線は悲劇的なラストへ向かう助走だったような気がします。
映像世界を知り尽くした著者ならではの視点でした。
報道の危うさと落とし穴、乱歩賞も頷ける作品でした。

■らぶほんさん
主人公の転落が痛々しいです。
マスメディアの怖さを強く感じました。

  • あおちゃん
  • 2007/08/12 4:24 PM








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