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「廃用身」久坂部羊

廃用身タイトル:廃用身
著者  :久坂部羊
出版社 :幻冬舎
読書期間:2007/05/14 - 2007/05/16
お勧め度:★★★★

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廃用身とは、麻痺して動かず回復しない手足をいう。漆原医師の究極の医療「Aケア」とはそれらを切断することだった! すぐそこにある、家族と医療の現実を予言する、衝撃の極近未来小説!

前半は漆原(うるしはら)糾(ただす)院長の手記、後半はその出版を手掛けた編集者の注記、という形になっています。何の予備知識もなかったので、表紙を捲ったところに書かれている名前が筆者と違うことに戸惑ってしまいました。何かの間違いかと思ったくらい。そんな戸惑いは中身を読み進めて一気に吹き飛びました。書かれているのは老人介護の悲惨な現状とそれに対する衝撃的な回答でした。

タイトルにある「廃用身」とは、脳梗塞などの麻痺で動かなくなり、しかも回復の見込みのない手足のことをいう医学用語。漆原医師は、神戸で老人医療にあたっていたが、"患者、介護者双方にとってより良い介護とは何か"をいつも思い悩みながら、やがて画期的な療法「Aケア」を思いつく。動かなくなった廃用身を切断(Amputation)して、患者の体重を軽くするというものだった。

患者たちの同意を得て、つぎつぎに施術する漆原医師。しかし、やがて「Aケア」をマスコミがかぎつけ、残酷でスキャンダラスな「老人虐待の大事件」と報道されてしまう。漆原医師は己の欲求を老人で晴らす悪魔の使いか? それとも老人介護現場に現れた天使なのか?

「Aケア」も非常に衝撃的でしたが、その発想に至る老人医療の現状、介護現場の惨状は未来の話と笑っていられないほど衝撃的でした。老人が老人を介護する老老介護。介護疲れから発生する老人虐待や殺人。独居老人の餓死。すべての現況は介護負担と考え、漆原医師は「Aケア」を提唱します。

漆原医師の手記を読んでいると、「Aケア」が画期的な解決策のように思えてなりません。要介護者の精神的負担となるのは、他人に迷惑をかけること。それを軽減するために少しでも体を軽くし、介護者の肉体的負担も減らす。要介護者は、体が軽くなったことで床ずれも減る、とまさにいいこと尽くし。しかし、その幻想は後半部分で砕かれます。

マスコミに叩かれ、自分自身が分からなくなっていく漆原医師。少年期の性向を知ると、自己の満足のために行っていたのかという疑問が湧き上がってきます。前半部分で漆原医師に少なからず共感してしまったのなら、マスコミの攻撃は自分に向いているようにも感じ取れるでしょう。

前半と後半でバランスを取り、小説としては一応の結論を出していますが、老人介護に対する答えは書かれてはいません。コムスンの問題もあったことですし、今後の高齢化社会を自分のこととしてもっと真剣に考える必要がありそうです。

内容が内容だけにあまり強くオススメ出来ませんが、非常に衝撃的で忘れられない作品となりました。


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