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「スコーレNo.4」宮下奈都

スコーレNo.4タイトル:スコーレNo.4
著者  :宮下奈都
出版社 :光文社
読書期間:2007/11/06 - 2007/11/07
お勧め度:★★★★★

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どうしても忘れられないもの、拘ってしまうもの、深く愛してしまうもの。そういうものこそが扉になる―。ひとりの女性への道のりを描く書下ろし長編小説。

一言で言ってしまえば、主人公の少女の成長物語。でも、一言で語っては勿体無い、すばらしい作品と思います。

自分より華やかな名前と容姿を持つの妹・七葉(なのは)にコンプレックスを抱いている姉・麻子。その思春期から大人の女性として自己を確立するまでの成長を綴った物語。劇的な出来事が起こるわけでなく、おそらく女性の誰しもが経験してきたであろう日常を綴っていますが、平易で繊細な文章の中には優しさがあふれています。

自分には何もないとついつい要領のよい妹と自分を比較してしまい、自己嫌悪に陥る麻子。他人には真似の出来ない分野を持っている人は別として、自分に自信の人なんてなかなかいないものです。多くは麻子のようなものでしょう。そんな麻子が大学、社会人といろいろな世界を経験して自分の夢を適えてていく姿に、読者は励まされることと思います。

淡々と文章が綴られますが、飽きることなく読み進められるのは美しい言い回しにあります。初読みの作家さんでしたが、今後も注目です。


「遭難、」本谷有希子

遭難、タイトル:遭難、
著者  :本谷有希子
出版社 :講談社
読書期間:2007/10/25 - 2007/10/26
お勧め度:★★★

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生徒の自殺未遂を機に、放課後の職員室は修羅場と化す。いじめのせい? 教師のせい? 責任転嫁と疑心暗鬼のスパイラルを辿ると、そこには、世にも性悪な女がいた−「トラウマ語り」の欺瞞を鋭くえぐるシリアスコメディ。2006年度No.1戯曲を決める"演劇界の直木賞"こと第十回鶴屋南北戯曲賞、受賞。

以前読んだ「生きてるだけで、愛。」が思いのほか面白かったので、本作を借りてきました。

戯曲と思ってなかったので借りる本を間違えたかなと思ったのですが、ぜんぜん気にならずに読めました。ある生徒の自殺未遂に関して、教師と生徒が入り混じって何に問題があったか、誰のせいかの責任の擦り付け合いが発生、そこからさらに登場人物たちの内面分析が展開されていきます。

会話の間を埋める言葉がないため、台詞からその人物の心情や漂う空気をすべて読み取らなければならないですが、登場人物の緊迫感や絶望感が十分に伝わってきました。

主人公が優位に立つために相手の弱みを探し徹底的に攻めたり、自分に非があるのにあたかも相手に非があったからこうなったと責任転嫁する様は自己愛の塊で、読んでいて気持ちがいいものではありませんでした。

ただ、主人公の塗り固めた嘘に綻びが見え、ただの寂しい人というのがわかった途端、逆に可愛そうだなと思えます。これまでの人生で主人公は結局何を学んで何を身に付けてきたのか。自分を高めるのではなく、他人を落として自分を高くみせていたなのだから、何も残っていないのでしょう。

いじめを扱いながら、それとは違う事を話の芯に据えているのはうまいと思いました。本を読むだけでなく、機会があれば舞台も見てみたいです。


「厭世フレーバー」三羽省吾

厭世フレーバータイトル:厭世フレーバー
著者  :三羽省吾
出版社 :文藝春秋
読書期間:2007/09/19 - 2007/09/20
お勧め度:★★★★

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突然、父親が失踪。14歳のケイは陸上部をやめて新聞配達、27歳のリュウは急に家長の意識にめざめるが-。家族という不可思議な関係の崩壊と再生をポップに描く。『別冊文芸春秋』連載を単行本化。

失職した父が失踪。母は酒浸りになって家事を放棄、一人暮らしをしていた長男が戻ってくるが、長女の帰宅は遅くなり、次男は陸上部を辞め、祖父のボケは進行し・・・。各章語り手を変えながら、崩壊する家庭とそれぞれの考えから、「家族とは」と考えさせてくれます。

タイトルがそれぞれの年齢になっていて、最初読んだときは最初の主人公の一代記かなと思ったのですが連作短編でした。家族各自が現状を受け止め、なぜ自分の身にこんなことが降りかかるのかと思いつつも心に折り合いをつけて、父のいない家族を再生してゆく。軽い文体で読みやすく、ネガティブな題材をポジティブに仕上げているので読後感も悪くないです。

それぞれの語りで、まったく姿を現さない父親の姿が浮き彫りになっていくのが面白いです。誰の目から見てもハチャメチャで。自分の父親じゃなかったら、ちょっと面白いかも。

たぶん父親がいたとしたら、早晩この家族は分裂していたでしょうね。何が幸いするのかわかりませんね。

+++++

【みなさまのご意見】


「太陽がイッパイいっぱい」三羽省吾

太陽がイッパイいっぱいタイトル:太陽がイッパイいっぱい
著者  :三羽省吾
出版社 :文藝春秋
読書期間:2007/09/14 - 2007/09/15
お勧め度:★★★

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バイト先の解体現場に人生のリアリティを見出した大学生のイズミ。巨漢マッチョ坊主カンや、左官職人崩れで女性に対し赤面症の美青年クドウ、リストラサラリーマンのハカセなどと働く「マルショウ解体」の財政は逼迫し、深刻な問題が…。過酷な状況における人間の力強さをユーモラスに描いた傑作青春小説。

イレギュラー」を読んで以来久々に三羽さんの本を読みました。第8回小説新潮長篇新人賞受賞作。

主人公は、大学に籍を置きながらも大学にいく意味を見出せず、建設解体作業のアルバイトをするイズミ。当初彼女との海外旅行資金を貯めることが目的だったが、働いて汗をかき、腹を空かせて飯食って寝るというシンプルな生活に充足感を見い出し、彼女と別れてもバイトに明け暮れる。解体屋で一緒に働く仲間たちとの交流や恋愛を通して、イズミは自分の進むべき道を模索する。

イズミが勤めるマルショウ解体のメンバーが実に個性的。マッチョ系直情男のカンを始め、マルヤマの親方、左官職人崩れの美青年クドウ、リストラ中年のハカセなどなど。突飛な設定ではなく、現代の縮図のようなリアリティがあります。

それぞれお金や家庭に問題を抱え、何とか暮らしている中で、大学を休学しているイズミは自分に出来ることは何かと思い悩む。自分も学生時代に悩みました。果たしてこれが何につながるのか。何に役立つのか。何とか折り合いをつけて今に至るわけですが、最近同じようなことをまた考えることがあります・・・。

ラストの結論が今一つしっくりこなかったので評価はやや下げて星三つ。表紙からターゲットは若い読者層と思いきや、それほど若くなくても(失礼!)楽しめると思います。

+++++

【みなさまのご意見】
Roko's Favorite Thingsさん('07/11/09追加)
まったり読書日記さん('07/11/09追加)
たりぃの読書三昧な日々さん('07/11/09追加)
本のことどもさん('07/11/09追加)
今日何読んだ?どうだった??さん('07/11/09追加)
ChiekoaLibraryさん('07/11/09追加)


「生きてるだけで、愛。」本谷有希子

生きてるだけで、愛。タイトル:生きてるだけで、愛。
著者  :本谷有希子
出版社 :新潮社
読書期間:2007/04/10 - 2007/04/11
お勧め度:★★★

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ねえ、あたしってなんでこんな生きてるだけで疲れるのかなあ?過眠、メンヘル、二十五歳。人と人とがつながりにくい現代を生きるひとりの女の子の物語。芥川賞候補作。

いつもお邪魔してるブログでインパクトのある表紙を見かけて借りてきました。

鬱に悩む主人公女性の一人称語りで物語は進行します。どんな行動にも意味を見つけ、自分を客観視し、そして自分はどうしようもないと結論付ける。僕自身は鬱じゃないですが、もちろん気分が沈むことだってあるし、何もかもが嫌になることだってあります。そういったときには、この本の主人公の気持ちに近いなと感じました。

なりたい自分やしたい行動がありながら、それとは違うことをしてしまう自分。だから、自分を自分から切り離してしまいたいけど、自分とは一生付き合わなければいけないもどかしさ。母の姿を見て、同じようはなりたくないと思っているのに、どんどん近付いてゆく自分。負のスパイラルに乗っているかのようでした。

彼氏との関係はいまひとつ理解できないけど、そんなのだったら別れりゃいいじゃんって言葉が簡単に言い出せない雰囲気で、彼の元彼女が復縁を迫ってくるようになると、レストランまで紹介されて働くようになってしまう完全な受身体質。ただ、環境が変わって色々と違う意見にも出会って、少々好転したように思います。殻を破って交流を深めるべきか。でも、それが出来れば鬱にはならないのだけど・・・。

同じメンヘルを扱ってるということで、僕の中では絲山さんの作品と多少かぶるのだけど、こちらの方が読みやすくて著者の意図がダイレクトに伝わってきました。まとまりなく書きましたが、他の作品も読んでみたいと思ってます。

+++++

【みなさまのご意見】


「ダブル」永井するみ

ダブルタイトル:ダブル
著者  :永井するみ
出版社 :双葉社
読書期間:2007/01/15
お勧め度:★★★

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若い女性が突然、路上に飛び出し、車に轢かれて死亡した。事故と他殺が疑われたこの事件は、被害者の特異な容貌から別の注目を浴びることになった。興味を持った女性ライターが取材を進めると、同じ地域でまた新たな事件が起こる。真相に辿り着いた彼女が見たものは―。かつてない犯人像と不可思議な動機―追うほどに、女性ライターは事件に魅入られていく。新たなる挑戦の結実、衝撃の長編サスペンス。

若い女性が突然、路上に飛び出し、車に轢かれて死亡するという事件があった。事故と他殺の疑われたこの事件は、被害者女性の容姿−ひどく太った女性−から世間の注目を集めた。雑誌記者・相馬多恵は、この事件の興味を抱き、取材を進める。そして、一人の女性・柴田野々香にたどり着く。さらに取材を進めるうちに、最初の事件のすぐ近所で新たな事件−中年の男性が地下鉄の階段で転落死−が発生する・・・。

登場人物たちがみんな嫌なやつで誰一人にも気持ちが移入出来ず、冒頭からラストまで非常に嫌な気分が続きました。

容姿で判断してはいけないとは思うのですが、でもやっぱり第一印象って見た目となってしまうと思います。残念ながら。この本では、本来同情すべきである亡くなった二人に対して、犯人の視点ですが、いかに周りに迷惑をかけ、周りの人びとを不快にしているか(容姿も含め)が描かれています。

探偵役である多恵も、この事件の調査をするきっかけは、社内での自分の地位や評価を高めるためのものであって、決して被害者への同情や正義感からではありません。また、調査の末たどり着いた女性・野々香も、端からみれば幸せの絶頂期で望みをすべて手に入れたように見えているのに、その実は嫉妬深く独占欲が強い。何だか嫌なやつのオンパレードです。

ミステリーとしては、途中で犯人が読めてしまい、多恵および警察がどのように犯人に迫るのかを期待して読みましたが、はっきりと解決せず、含みを持たせたようなラストでした。犯人のあんな言い訳を、警察が鵜呑みにしちゃなんて・・・、信じられません。こんなに嫌な気持ちにさせたんだから、犯人を捕まえてすっきり終わらせて欲しかったです・・・。

まぁでも、裏を返せばこれほど嫌な気持ちにさせてくれる本は、それはそれですごい本なのかもしません。著者の本は初読みだったのですが、もう何冊か読んでみようかと思っています。

+++++

【みなさまのご意見】
待ち合わせは本屋さんでさん('07/02/26追加)


「イレギュラー」三羽省吾

イレギュラータイトル:イレギュラー
著者  :三羽省吾
出版社 :角川書店
読書期間:2006/10/08 - 2006/10/10
お勧め度:★★★★

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村が水害にあい、グラウンドも使えず練習もままならないニナ高野球部。素質は全国レベル、態度ならメジャーレベルの剛速球投手コーキもその素質をくすぶらせ、ナンパやケンカ三昧の日々。そんなニナ高に、恰好の練習相手として目を付けたのは名門野球部K高だった。だが両校は合同練習初日に衝突する。自分の球に絶大な自身を持つコーキはK高野球部に勝負を挑むが…。『太陽がイッパイいっぱい』『厭世フレーバー』の三羽省吾が描く、ダメダメ野球部のむやみに熱い青春ストーリー登場。

台風で村が壊滅状態になり、仮設住宅暮らしをする蜷谷村の住民たち。普及の目処が立たず、住民たちが次第に疲弊していく中、蜷谷高校野球部の活動再開のニュースが舞い込み、村人たちは久しぶりに盛り上がります。甲子園に出場した名門野球部圭真高校(通称:K高)からの申し出で、K高野球部と合同練習をすることになった蜷高野球部の面々。些細なことでぶつかりながらも、野球だけでなく精神的にも成長していくK高&蜷高野球部員たちのひと夏の物語です。

またまた初読みの作家さん。「厭世フレーバー」が気になっていましたがブログで評判だったので、まずは最新作のこちらを手にしました。これが大当たり。話の進行も、交わされる会話もとてもテンポがよくって、ぐんぐん話しに引き込まれて、どんどんページが進みます。

純粋に野球物語として読んでもよし、高校生の熱い友情物語として読んでもよし、そして災害復興に対する悲しい現実の問題を考えながら読んでもよし。いろいろな要素が詰まっていますが、互いの話を殺しあうことなく、うまく書き込まれています。

僕はやっぱり野球中心で読みました。一応高校球児だったもので。田舎のチームにありがちの、素行の悪い蜷高部員たちが、優等生たちに感化されて野球に打ち込む姿。監督、マネージャーとの軽妙なやり取り。そして、夏の甲子園予選での奮闘に、その場にいるつもりで読みました。蜷高野球部のとった「反則技」には、ちょっとそれはないだろう・・・と思いましたが。

K高、蜷高の試合結果はいかに? 現実の高校野球に負けないほどのドキドキ感が、この本には詰まっています。オススメです。

+++++

【みなさまのご意見】


「限りなく透明に近いブルー」村上龍

限りなく透明に近いブルータイトル:限りなく透明に近いブルー
著者  :村上龍
出版社 :講談社文庫
読書期間:2006/04/06 - 2006/04/09
お勧め度:★★★

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福生の米軍基地に近い原色の街。いわゆるハウスを舞台に、日常的にくり返される麻薬とセックスの宴。陶酔を求めてうごめく若者、黒人、女たちの、もろくて哀しいきずな。スキャンダラスにみえる青春の、奥にひそむ深い亀裂を醒めた感性と詩的イメージとでみごとに描く鮮烈な文学。群像新人賞、芥川賞受賞。
著者デビュー作にして第19回群像新人文学賞、第75回芥川賞受賞作品。アメリカ軍基地を持つ福生を舞台に、何事にも無気力な青年・リュウとその仲間たちが乱交、麻薬に明け暮れる日々を描いています。リュウ=龍?著者本人の体験が元に書かれているのでしょうか。

200ページにも満たない非常に薄い本なのに、読み終えるのに結構時間がかかってしまいました。僕だけかも知れませんが、非常に読みにくい。というのも会話や情景描写が明らかに主人公だけでなく多視点で書かれているから。誰が話しているのか、誰の行動なのかを一瞬のうちに理解できず、何度もページを行ったりきたりしました。

内容はぶっ飛んでますが、全編に渡り静寂な雰囲気が漂っています。世間離れしていて、現実と夢の間を行ったり来たりしている感じ。僕の貧困な語彙ではうまく表現できないのがもどかしいです・・・。本文を読んでいるときは、この本を通して著者が何を言いたかったのか今一つわかりませんでしたが、解説を読んですっきりしました。もっと読解力をつけねば・・・。

タイトルが内容にぴったりはまっていますが、当初のタイトルは違ったようです。巻末に年表があるので確認してみてください。どこからこんなタイトルになるのだろう?不思議です。

+++++

【みなさまのご意見】
文学な?ブログさん('06/07/21追加)