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「対岸の彼女」角田光代

対岸の彼女タイトル:対岸の彼女
著者  :角田光代
出版社 :文藝春秋
読書期間:2008/07/17 - 2008/07/18
お勧め度:★★★

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女の人を区別するのは女の人だ。既婚と未婚、働く女と家事をする女、子のいる女といない女。立場が違うということは、ときに女同士を決裂させる。

感想はそのうち・・・。


「サクリファイス」近藤史恵

サクリファイスタイトル:サクリファイス
著者  :近藤史恵
出版社 :新潮社
読書期間:2007/12/21 - 2007/12/24
お勧め度:★★★★★

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ただ、あの人を勝たせるために走る。それが、僕のすべてだ―。二転三転する真相、リフレインし重きを増す主題、押し寄せる感動! 自転車ロードレースの世界を舞台に描く、青春ミステリの逸品。

Webでの評判がよくて手にした作品でしたが、これが大当たり。

欧州ではすごく人気があるけど日本では馴染みの薄い自転車ロードレースを舞台にしています。僕もそれほど詳しいわけじゃありませんが、大学生時代にアルバイトで「ツールド北海道」のスタッフをしたことがあり、ルールなどは多少わかります。思っている以上に過酷で駆け引きが重要な知力と体力のスポーツです。

ある日本のロードレースチームに所属する白石誓。将来を嘱望された陸上競技を離れ、自転車レースに自分の居場所を見出す。チームには絶対的なエース・石塚が存在し、白石も尊敬しているのだが、石塚には三年前に発生した事故にまつわる黒い噂が・・・。

ある男は勝利することに、またある男は自分を殺してサポートに回ることに美を見出す。男たちの信念が激しくぶつかり合う熱い話でした。ニュースでロードレースの映像が流されるとき(「ツールドフランス」などは稀にある)、勝った個人にしか注目されません。しかし裏ではその人を勝たせるために、何人もの仲間が犠牲となっています。ロードレースは「個人」ではなく「組織」で戦うスポーツであることを本書は十分に伝えています。

こういうマイナースポーツ(失礼!)を題材に扱うと、得てして競技の説明にページを割きがちですがその辺はさすがによく出来ていて、主人公の意思の中にうまくもぐりこませて説明臭さを中和しています。さらに読んでいて目の前に情景が浮かぶくらいのレース展開、駆け引きはとても迫力があります。

終盤になってようやく石塚に纏わる噂=ミステリーの要素が展開していきますが、本作はミステリーとしてではなくひとりの青年の成長物語として読むほうが楽しめると思います。そして、自転車にかけた男たちの純粋な姿勢と清らかさ、潔さに胸が熱くなることは間違いありません。

激しくオススメです。

+++++

【みなさまのご意見】
Roko's Favorite Thingsさん
らぶほん−本に埋もれてさん('08/01/17追加)
"やぎっちょ"のベストブックde幸せ読書!!さん('08/03/11追加)
苗坊の読書日記さん('08/03/11追加)
higeruの大活字読書録さん('08/04/06追加)


「ミミズクと夜の王」紅玉いづき

ミミズクと夜の王タイトル:ミミズクと夜の王
著者  :紅玉いづき
出版社 :メディアワークス
読書期間:2007/10/15 - 2007/10/16
お勧め度:★★★

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魔物のはびこる夜の森に、一人の少女が訪れる。額には「332」の焼き印、両手両足には外されることのない鎖、自らをミミズクと名乗る少女は、美しき魔物の王にその身を差し出す。願いはたった、一つだけ。「あたしのこと、食べてくれませんかぁ」死にたがりやのミミズクと、人間嫌いの夜の王。全ての始まりは、美しい月夜だった。―それは、絶望の果てからはじまる小さな少女の崩壊と再生の物語。第13回電撃小説大賞「大賞」受賞作、登場。

第13回電撃大賞受賞作。「電撃大賞」といえば、有川浩さん。で、その有川さんがオススメしている本。巷の評判が高いので読んでみました。

自分の村から脱走し、夜の森を彷徨い歩くミミズクという少女。手足には鎖をつけ、額には番号の刻印。ミミズクは、村では奴隷であった。そんな彼女が望むのは、夜の王に食べられること。人間嫌いの夜の王だが、唯一ミミズクとだけは心を通わせてゆく・・・。

最初から最後まで、ミミズクの喋り方が受け入れられなかったのですが、それでも書きたいことをストレートに書いている印象に好感が持てました。前半は夜の王とミミズクが徐々に心を通わせている様子、中盤は記憶を無くしたミミズクとそれを温かく迎え入れる人びととの交流、そしてラストは記憶を取り戻したミミズクが取った自分の意思による初めての行動、と淀みなく展開して行きます。

デビュー作で文章が稚拙、また展開もベタなのが割り引く要素ですが、なかなか楽しく読めました。ただ期待値が高かったせいか、それほど感動することもなく、まして泣くなんてことは全くありませんでした。

あらたまって言うまでもないことですが、中高生向きの本と思います。

+++++

【みなさまのご意見】
日だまりで読書さん('07/11/29追加)
たこの感想文さん('07/11/29追加)


「陰日向に咲く」劇団ひとり

陰日向に咲くタイトル:陰日向に咲く
著者  :劇団ひとり
出版社 :幻冬舎
読書期間:2007/06/18 - 2007/06/18
お勧め度:★★★

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お笑い芸人・劇団ひとり、衝撃の小説デビュー! 「道草」「拝啓、僕のアイドル様」「ピンボケな私」ほか全5篇を収録。落ちこぼれたちの哀しいまでの純真を、愛と笑いで包み込んだ珠玉の連作小説集。

一年以上の図書館予約待ち。これだけ待っておもしろくなかったらどうしようと思ってましたが、評判通り面白かったです。「道草」「拝啓、僕のアイドル様」「ピンボケな私」「Overrun」「鳴き砂を歩く犬」五編の短編を収録。

各短編で主人公が異なる別々のお話だけど、登場人物がリンクしていてなかなかうまく書けている印象。人物観察が好きなんでしょうね。主人公として取り上げてる人たちが懸命に生きている様が、滑稽さも交えながら的確に描かれています。劇団ひとりのネタを活字にしただけのような気もしますが、うまく文章化できるってのも才能ですよね。

劇団ひとりではなく別な人が書いたとしたら、これほど売れて、面白いって評価になったでしょうか。著者の名前で売れたっていう面もあると思うけど、次回作が出たら、また読んでもいいなって思わせる内容でした。二番煎じ、三番煎じで他の芸人が小説をどんどん書くってことにはなって欲しくありませんが・・・。

+++++

【みなさまのご意見】


「削除ボーイズ0326」方波見大志

削除ボーイズ0326タイトル:削除ボーイズ0326
著者  :方波見大志
出版社 :ポプラ社
読書期間:2007/03/07 - 2007/03/08
お勧め度:★★★★

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主人公、直都が手に入れたのは、出来事を「削除」できる装置だった。削除したいのは深爪の傷、息苦しい現実、それとも忘れられない過ち?生命力に満ちた人物造形と疾走感あふれる筆致が織りなす、まったく新しいリアル・エンターテインメント。第1回ポプラ社小説大賞受賞。

大賞賞金二千万円のポプラ社小説大賞受賞作。

主人公の直都は、フリマにいたおじさんにデジカメの様な奇妙な機械をもらう。おじさん曰く「起きた出来事を削除出来る機械」。半信半疑の直都であったが、色々と試すうちに機械の力を実感、仲間と共に過去の出来事を消してゆく。思ってもいなかった"副作用"があることも露知らず・・・。次第に機械に頼るようになった直都は、ある事件に巻き込まれてゆく。

少年少女たちの心の動きが細かく描かれていて、とても楽しく読めました。主人公の直都はもちろんのこと、事故で車椅子生活を余儀なくされた親友、その事故の原因を作り、ひきこもりになってしまった兄、口数の少ないクラスメイトの少女など、悩みを抱えた彼らの内面が丁寧に書かれていたと思います。小道具の設定(デジカメ風の機械とか株で失敗とか)も今風で、なかなかよかったです。

出来事を消すという行為に対する思慮の浅さは、小学生らしいですね。自分だったら何を消すかと考えてみたのですが、全く思い浮かびませんでした。現在を変える必要がないってことでしょうか。割と満足しているのかな、現状に。

一点、ん?と思ったところがありました。「1秒ごとに数字を1、2、3・・・と書いていって、どこまで消えているかで削除出来る時間を計る」ってところなのですが、1の時点から削除してしまったら、数字を書いたこと自体がなくなってしまうのではないかって思いました。また、数字の途中から消したとしても、削除後の出来事が変わってしまって、消した時間に書いた数字だけなくなるってことはないとも思いました。

まぁ、多少矛盾があったとしても、楽しめたのでよしとします。

+++++

【みなさまのご意見】
ナナメモさん
宙の本棚さん


「ボーナス・トラック」越谷オサム

ボーナス・トラックタイトル:ボーナス・トラック
著者  :越谷オサム
出版社 :新潮社
読書期間:2007/02/19 - 2007/02/20
お勧め度:★★★★

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こいつ、なかなかいいやつなんだ、幽霊であることを除いては…ハンバーガーショップで働く「僕」は、ある雨の晩、ひき逃げを目撃したばかりに、死んだ若者の幽霊にまとわりつかれる羽目に。でも、なかなかいいやつなんだ、アルバイトの美少女にご執心なのは困りものだけど…。「僕」と幽霊がタッグを組んだ犯人探しの騒動を描いて絶賛された、ユーモアホラーの快作登場!第16回日本ファンタジーノベル大賞優秀賞受賞作。

主人公は、大手ハンバーガーショップで働くサラリーマン・草野。ある日、深夜に車で帰宅途中ひき逃げを目撃してしまったために、幽霊となった被害者の大学生・横井亮太にまとわりつかれることに・・・。草野と亮太は、ひき逃げ犯を探し始める。

死が絡む話ですが、悲壮感とは無縁の明るいお話。要領の悪い草野とお調子者の亮太の掛け合いが軽妙で、どんどんと読み進めてしまいます。最終的にはひき逃げ犯探しに結びつくのだけどサイドストーリーの多い話で、亮太が草野に仕事の仕方をアドバイスしたり、それによってショップスタッフたちも生き生きと仕事し始めたり、ぽろっと亮太がこぼす「生きてるくせに」という言葉にふと考えさせられたり、読んでいて飽きませんでした。

何気ない日常が、生きている人、死んでいる人の目線から書かれていて、その対比が面白いです。平凡な生活でも生きていたら何かいいことが起こるだろうみたいな感覚になりました。

きっかけはどうであれ気心がしれた人から言われる一言。新鮮な「気付き」によって人間って成長していくんだなぁって感じました。死を扱いながら、生きるってすばらしいことなんだと改めて感じさせられました。人との出会いは大切にしたいですね。

それにしても越谷在住で「越谷オサム」って、そのまま過ぎませんか。

+++++

【みなさまのご意見】


「ユグドラジルの覇者」桂木希

ユグドラジルの覇者タイトル:ユグドラジルの覇者
著者  :桂木希
出版社 :角川書店
読書期間:2007/02/08 - 2007/02/14
お勧め度:★★★

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華僑の若き総帥“華龍”、娼街育ちにしてEU経済界の女帝、某巨大財閥をバックに持つ米最大IT企業トップ、そして流浪の一日本人と覆面トレーダーの二人組…。混沌のネット経済界を制するのは誰か―?くせ者たちが火花を散らす、タイムリミットの頭脳戦。第26回横溝正史ミステリ大賞大賞受賞作。

インターネットにより世界中の株式、金融取引を可能とする動きが進む中、米IT業界のトップ、欧州経済界の女帝、華僑の総帥といった経済覇者たちが主導権を握ろうとしのぎを削っている。そんな彼らに、日本人の元プログラマ・矢野と覆面トレーダーが勝負を挑み・・・。

久しぶりに登場人物が外人だったせいか、名前が頭に入ってこない・・・。それはさておき、序盤は結構楽しく読めました。株式投資に関して知識が全くないのですが、強烈な個性を放つ人物ばかりなので、どのように物語が展開していくかと先がすごく気になりました。

しかし、中盤を過ぎると一転、読み進めるのが辛くなってきました。自分の中で、それらの強烈な個性がうまく混ざりあってこないのです。それは、各人の生い立ちやこれまでの経歴に関して書き込みが薄く感じ、経済覇者となった先に何を目指すのかが見えてこなかったからかもしれません。お金ではない、とは漠然と理解したのですが・・・。

非常に壮大なスケールでそれに僕の頭がついていけなかったのかもしれませんが、もう少し詳しい描写があればとちょっと残念に思いました。

+++++

【みなさまのご意見】


「贄の夜会」香納諒一

贄の夜会タイトル:贄の夜会
著者  :香納諒一
出版社 :文芸春秋
読書期間:2007/01/30 - 2007/02/03
お勧め度:★★★★★

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“犯罪被害者家族の集い”に参加したふたりの女性が殺された。ハープ奏者は両手首を切り落とされ、もうひとりは後頭部を石段に叩き付けられて―。刑事の大河内は被害者の夫の行動に疑問を覚えるが、なぜか公安部からストップがかかる。また、“集い”にパネラーとして出席した弁護士は、19年前に起きた少年猟奇事件の犯人だったことを知る。洗脳によって社会の暗闇に潜みつづける真犯人は…。猟奇的殺人鬼とプロの殺し屋がぶつかる時、警察組織の腐敗を目の当たりにした刑事も孤独な一匹狼として暴走を始めた。執筆に6年を費やし、かつてないスケールとスピードで展開する待望のサスペンス巨編。

内容盛りだくさん、ページも盛りだくさんの一冊。

本書は色々な要素が絡み合って構成されています。神戸連続児童殺傷事件をモデルにしたと思われるサイコサスペンスの一面。「ゴルゴ13」クラスの凄腕ヒットマンが、自分の信念の元に犯人を追うハードボイルドの一面。猟奇殺人を追う警察小説としての一面。過去に犯罪を犯した少年に対する周囲の視線を描く社会派の一面。かなりスケールの大きな話になっているのですが、どれにも明確な回答が準備されており、ラストにはきちんと収束する点に著者の筆力を感じました。

登場する人物たちが背負う過去も、物語の構成要素に負けず劣らずものすごく濃くって、最後にどのような未来が待っているのか気になって仕方ありませんでした。特に目取間渉。一つの事件により裏から表に引きずり出された男。数人の視点で描かれた章が交互に展開していくのだけど、主人公は間違いなくこの男でしょう。

どの人物も生き生きと描かれているんだけど、唯一心理学者・田宮恵子が登場する意味と犯人がこの犯罪に及んだ心理だけは理解し切れませんでした。ただ、それでこの作品が持つ魅力が失われるということはありませんでした。

初読みの作家さんだったのですが、ものすごく大当たり。既刊新刊をチェックしたいと思います。

+++++

【みなさまのご意見】


「オートフィクション」金原ひとみ

オートフィクションタイトル:オートフィクション
著者  :金原ひとみ
出版社 :集英社
読書期間:2006/11/22 - 2006/11/25
お勧め度:★★

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私は何故こんなにも面倒な人間なのだろう-。オートフィクション(自伝風小説)を書き始める作家。それは彼女が殺した過去の記録であり、過去に殺された彼女の記録でもあった…。

22歳の女性作家・リンが、編集者に請われてオートフィクション=自伝的創作小説を描いていくというお話。22歳の冬から始まり18歳の夏、16歳の夏、15歳の夏と現在から過去へと遡る形の四つの章で構成されています。

作中の女性作家に、著者を重ねて読むことになると思います。それぞれの話はどれも短いですが、かなりショッキングな内容です。夫を愛するがあまり被害妄想に陥ったり、恋人の嘘に傷いて他の男と性交渉を持ったり、ギャンブル狂で暴力的な男との同棲したり。そして妊娠、中絶。たった20年ほどの人生なのに、浮き沈みがかなり激しいです。いや、沈んでばっかりかも。

根元にあるのは「寂しさ」なのでしょう。「私をもっと愛して欲しい」「私をもっと知って欲しい」という欲求が、少女の行動の根元にあります。年齢を遡るにしたがって、よりストレートに「寂しさ」が表現されてます。

ただ、作品半ばで上記のように結論付けてからは、同じことを手を変え品を変えて表現しているだけとしか受け取れませんでした。第一章は割と楽しく読めたのですが、中盤以降は読むのに若干の苦痛を伴いました・・・。

「蛇にピアス」は割りと好きだったんだけどなぁ。他の本に手を出すのが躊躇われる結果となってしまいました。

+++++

【みなさまのご意見】
聞いてあげるよ君の話をさん('06/12/06追加)
きつねの本読みさん('06/12/06追加)


「東京ダモイ」鏑木蓮

東京ダモイタイトル:東京ダモイ
著者  :鏑木蓮
出版社 :講談社
読書期間:2006/10/31 - 2006/11/01
お勧め度:★★★

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男は帰還を果たし、全てを知った。極限の凍土・シベリア捕虜収容所で起きた中尉斬首事件。60年間の沈黙を自らに強いた男が突如、姿を消した―。第52回江戸川乱歩賞受賞作。

1947年11月、極寒の地シベリアの日本人捕虜収容所で一人の将校が首を切り落とされ殺害された。それから58年が経過。自費出版専門の出版社・薫風堂に勤める槙野は、高津という老人からシベリア抑留の経験を纏めた句集を出版したいと依頼される。出版に向けて作業が進む中、京都・舞鶴港でロシア人女性の死体が発見され、身元保証人の日本人男性が行方不明となった。そして、高津もその新聞記事と共に姿を消してしまい・・・。

第52回江戸川乱歩賞受賞作。既読の「三年坂 火の夢」との同時受賞です。「三年坂〜」は幻想的なミステリでしたが、こちらは社会派ミステリでしょうか。

シベリア・イルクーツクの捕虜収容所に関する描写が非常に興味深かったです。明日のダモイ(帰還)を夢見て、鉄道を敷く業務に従事する捕虜兵たち。厳しい寒さと少ない食料、そして過酷な労働。帝国軍人としての誇りを盾に叱咤激励する上官と何を信じて生きればよいか見えなくなっている部下との溝。極限状態の人々の心理がひしひしと伝わってきました。

自費出版の手記とその中の俳句で、犯人をあぶりだすという手法はとても新鮮でした。特に要所要所で出てくる俳句が、それまでの手記を纏める形になってて面白いなと思います。素養がないので、それぞれの句の意味を理解するまでには至りませんでしたが。

ただ、それに引き換え肝心のミステリ部分はとても不満。犯人はこの人しかないだろうという展開を、最後まで覆せないまま終局を迎えました。警察が犯人を追い詰めた物証も、そんな万分の一の確率に満たないものに警察が賭けるのかと疑問が残ります。

昨年の乱歩賞受賞作「天使のナイフ」と比較すると、どうしても小粒なイメージが拭えませんが、手記部分の緻密な描写、自費出版社を舞台とする着想など、今後に期待させられる部分をいくつか見せてもらえました。次を楽しみに待ちたいと思います。

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【みなさまのご意見】