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「雪が降る」藤原伊織

雪が降るタイトル:雪が降る
著者  :藤原伊織
出版社 :講談社
読書期間:2008/02/18 - 2008/02/21
お勧め度:★★★

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母を殺したのは、志村さん、あなたですね。少年から届いた短いメールが男の封印された記憶をよみがえらせた。苦い青春の日々と灰色の現在が交錯するとき放たれた一瞬の光芒をとらえた表題作をはじめ、取りかえようのない過去を抱えて生きるほかない人生の真実をあざやかに浮かびあがらせた、珠玉の六篇。

六編の中編集。表題作のほか、「台風」「銀の塩」「トマト」「紅の樹」「ダリアの夏」が収録されています。

ハードボイルド路線は継承しつつも、これまでと少し違う雰囲気も感じることが出来る良作ぞろいです。全編通して物静かに話は展開していますが、登場人物描写が細かくて主人公に肩入れして読むことが出来ました。

雰囲気が似ている中編が並んでいるので、マンネリ感は否めませんが、藤原伊織ファンは是非読むべき作品と思います。

六編のうち、「台風」「雪が降る」が好編。両辺ともある出来事を契機に昔の出来事を回想する話で、少年・青年時代の心の葛藤や憧れ、恋愛感情が自分のことのように胸を締め付けてきます。現実は残酷ですが、温かい未来を感じさせるラストに脱帽です。


「遊戯」藤原伊織

遊戯タイトル:遊戯
著者  :藤原伊織
出版社 :講談社
読書期間:2007/08/20 - 2007/08/21
お勧め度:★★★★

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ネット上に対戦ゲームで出会った男と女。正体不明の男に監視されながら、二人は奇妙に繋がり合っていく。著者が闘病中も書き続けた表題作と、遺作となった中編「オルゴール」を収録。

2007年5月になくなった著者の遺作。未完の連作短編と中編が収録されています。

亡くなられてから2ヵ月後に本書は刊行されました。出版社に商業的な思惑がはたらいたかどうかは定かではないですが、著者のファンとしては素直に新刊が読めてうれしかったです。

ネット上のビリヤード対戦サイトで知り合った男女が、ゆっくりと心を通わせてゆく過程を淡々と描き出しています。父親からの虐待という過去を持つ男が、なぜかこの女性にだけ心を開く。そうこういているうちに、謎の男が姿を見せて・・・。二人の関係がこのあとどのように展開していくのか。謎の男の正体は。

これからというとこで病に倒れ、さぞかし無念だろうと思います。創作途中ではおそらく体調があまり優れなかったのではないかと推察しますが、作品からはそんなこと微塵も感じません。古臭いけど清々しくて、重々しいけど読みやすい独特の文体。未完なのが残念だけど、読む価値は十分にあると思います。

遺作となった読み切りの中編の出来がまたすばらしかったです。哀しい内容と現実とがダブってしまい、ぐっとこみ上げるものがありました。

享年59歳ですか・・・。もう新作が読めないのが残念です。ご冥福をお祈りしたいと思います。

+++++

【みなさまのご意見】


「ひまわりの祝祭」藤原伊織

ひまわりの祝祭タイトル:ひまわりの祝祭
著者  :藤原伊織
出版社 :講談社文庫
読書期間:2007/06/21 - 2007/06/26
お勧め度:★★★★★

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自殺した妻は妊娠を隠していた。何年か経ち彼女にそっくりな女と出会った秋山だが、突然まわりが騒々しくなる。ヤクザ、闇の大物、昔の会社のスポンサー筋などの影がちらつく中、キーワードはゴッホの「ひまわり」だと気づくが…。名作『テロリストのパラソル』をしのぐ、ハードボイルド・ミステリーの傑作長編。

妻を自殺で亡くして以来、引きこもった生活を送っていた主人公。人との接触もほとんどない生活が続いていた。そんな生活も、元上司からの奇妙な依頼で一変する。カジノで500万を使い切って(負けて)欲しいという依頼である。カジノへ行ってみるとそこには妻とよく似た一人の女性が・・・。ファン・ゴッホの「ひまわり」をキーワードに、妻の自殺の真相が徐々に明らかとなってゆく。

「テロリストのパラソル」に負けず劣らず面白かったです。「テロリストのパラソル」と同様、主人公は世捨て人のような生活を送っています。ただ、高校時代から絵画の腕前は一級で、デザイナーとして名を馳せていた時代もあります。ギャンブルに関して特殊な才能を持っている点もあわせて、話は見事に展開していきます。

序盤は登場人物たちの軽快な会話に、終盤は「ひまわり」の謎にとページをめくる手が止まりませんでした。軽さと重さを兼ね備えた文章・雰囲気作りには脱帽です。単純なハードボイルドはあまり好きではないですが、ミステリーの要素が絡む著者の作品は大好きです。

終盤はやや難解となってきてリーダビリティが低下するのが残念ですが、それも無理に粗を探せばといった程度と思います。直木賞、乱歩賞受賞後の第一作からくる期待で、本書は十分面白いのに巷の評価は低くなってしまったように思います。未読の方は是非読んでみてください。

+++++

【みなさまのご意見】


「ダックスフントのワープ」藤原伊織

ダックスフントのワープタイトル:ダックスフントのワープ
著者  :藤原伊織
出版社 :文藝春秋
読書期間:2007/04/09 - 2007/04/10
お勧め度:★★★

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大学の心理学科に通う「僕」は、ひょんなことから自閉的な少女・下路マリの家庭教師を引き受けることになる。「僕」は彼女の心の病を治すため、異空間にワープしたダックスフントの物語を話し始める。彼女は徐々にそのストーリーに興味を持ち、日々の対話を経て症状は快方に向かっていったが…。表題作ほか三篇。

先日亡くなった著者のデビュー作にしてすばる文学賞受賞作。

表題作「ダックスフントのワープ」は、家庭教師をしている「僕」が小学生の女の子に対し、スケボーに乗ったダックスフントの話を通して、答えを簡単に出し切れない社会の難しさを説くお話。作中の寓話については思い出せるのだけど、結末は忘れてしまいました・・・。突然終わりを迎えて「えっ!?」と思った記憶があります。著者が言いたいことの半分も理解しきなかったようで消化不良・・・。

その他「ネズミ焼きの贈りもの」「ノエル」「ユーレイ」の三編が収録されていますが、哲学的な要素が漂っていたり、過去の影に捕らわれて抜け出れなかったりと、登場人物の内面を細かく描写しています。以後の作品で度々登場する"影を持った主人公像"の元となる姿を垣間見ることが出来ますが、如何せん僕には少々難しすぎました・・・。

「テロリストのパラソル」や「シリウスの道」から著者の本を読み始めた方には評価が分かれそうな本です。こんな本も書けるんだな、という新しい発見はありました。

+++++

【みなさまのご意見】


「ダナエ」藤原伊織

ダナエタイトル:ダナエ
著者  :藤原伊織
出版社 :文藝春秋
読書期間:2007/04/04 - 2007/04/05
お勧め度:★★★★

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個展に出品された肖像画に何者かがナイフを突き立て、硫酸をかけた。その事実を知った画家が取った行動とは?広告界と美術界を舞台に、男たちと女たちの痛切な悲哀を描いた全3編を収録した、心揺さぶられる作品集。

表題作「ダナエ」のほか、二編を収録した短編集。「ダナエ」は100ページほどだから、中編といったほうがよいかも。

2年前に食道癌であることを告白した藤原さんの新刊が読めるとは、とてもうれしいです。応援の意味をこめて、即購入しました(読むのは遅くなったけど・・・)。

表題作の「ダナエ」。レンブラントの絵「ダナエ」と同様の事件が発生する。画家・宇佐見が個展に出展した義父の肖像画に、何者かがナイフを突き立て、硫酸をかけたのだ。一体何者の仕業なのか。そして犯人の目的は何なのか。

過去に影を持つ主人公。その過去があぶりだされて・・・。レンブラントの「ダナエ」を知らない人でも、作中の的確な紹介から問題なく読めます。興味深い展開にぐいぐい引き込まれ、ミスリードを誘う。最後に未来への希望が感じられる点が、これまで読んだ著者の作品になかった点ですが、紛れもなくこれは「藤原作品」でした。

他の二編では、「水母(くらげ)」が良かったです。昔付き合っていた女性のために、尽力する男。こちらも紛れもなく「藤原作品」でした。

この本を読んで、つくづく藤原さんの長編を読みたくなりました。長編が書けるほどに回復することをお祈りしてます。

+++++

【みなさまのご意見】
本のことどもさん
kiku'sさん('07/06/05追加)
肩の力を抜いてさん('08/02/18追加)


「テロリストのパラソル」藤原伊織

テロリストのパラソルタイトル:テロリストのパラソル
著者  :藤原伊織
出版社 :講談社文庫
読書期間:2006/03/07 - 2006/03/8
お勧め度:★★★★★

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アル中バーテンダーの島村は、過去を隠し二十年以上もひっそり暮らしてきたが、新宿中央公園の爆弾テロに遭遇してから生活が急転する。ヤクザの浅井、爆発で死んだ昔の恋人の娘・塔子らが次々と店を訪れた。知らぬ間に巻き込まれ犯人を捜すことになった男が見た真実とは…。史上初の第41回江戸川乱歩賞・第114回直木賞受賞作。
第41回江戸川乱歩賞・第114回直木賞同時受賞作。

藤原さんの本は「シリウスの道」に続き2冊目。本書で登場した人物が「シリウスの道」に出ていたそうで、順番が逆となりましたが読んでみました。で、読んでみての率直な感想は、"逆順に読んでよかった"ということ。おそらく本書を読んで「シリウスの道」を読んだら、「シリウスの道」には満足できなかっただろうと思います。

40代のアル中バーテンダー・島村が主人公。20年以上もの間、爆弾を作り爆発させた罪で指名手配となり、逃亡を続けている男。そんな島村が日課としていた新宿中央公園での飲酒の最中、無差別爆破テロ事件に遭遇する。犠牲者の中には、以前同棲していた女性・園堂優子、そして同じ罪で逃亡を続けていた全共闘闘争を共にした友人・桑野誠の名前もあった。爆破の瞬間に三人が同じ場所に居合わせたのは全くの偶然なのか・・・。

読者をひきつける謎の数々。スピード感ある展開。魅力的な登場人物たち。そして、意外なラスト・・・。どれにも大満足です。ひっそりと暮らしていたのにいきなり表へと立たされた島村。偶然を運命と受け入れあの手この手を使って事件の真相に迫ります。脇を固める登場人物たちがまた個性的。ホームレスのタツ、ハカセや元警察官のヤクザ浅井などとのウィットに飛んだ会話には自然と笑みがこぼれ、緊迫感のある会話には身を固くしました。ミステリー小説でありハードボイルド小説とも言えると思います。

どの人も皆真っ当に生きてるとは言えない人々たちだけど、なぜかそういう風に生きるのもいいかも、なんて思わせられてしまいました。まぁもちろん実際にはそんな生き方は出来ませんが・・・。島村と浅いの関係には憧れのようなものも多少感じます。全共闘など全く知らない世代ですが、その時代の鬱屈したパワーや空気感を感じてみたかったなぁと思います。

「シリウスの道」との繋がりも解け、すっきりとしました。他の藤原作品にも手を出す予定ですが、それよりも病気から回復して執筆活動を再開し、一日も早く新刊発売の情報が耳に届くことを切に願っています。

+++++

【みなさまのご意見】
のほ本♪さん
Gotaku*Logさん
日記風雑記書きなぐりさん
たこの感想文さん
higeruの大活字読書録さん('07/03/17追加)
しんちゃんの買い物帳さん('07/07/30追加)


「シリウスの道」藤原伊織

シリウスの道タイトル:シリウスの道
著者  :藤原伊織
出版社 :文藝春秋
読書期間:2006/01/16 - 2006/01/20
お勧め度:★★★★★

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東京の大手広告代理店の営業部副部長・辰村祐介は子供のころ大阪で育ち、明子、勝哉という二人の幼馴染がいた。この三人の間には、決して人には言えない、ある秘密があった。それは…。月日は流れ、三人は連絡をとりあうこともなく、別々の人生を歩んできた。しかし、今になって明子のもとに何者からか、あの秘密をもとにした脅迫状が届く!いったい誰の仕業なのか?離ればなれになった3人が25年前の「秘密」に操られ、吸い寄せられるように、運命の渦に巻き込まれる−。著者が知悉する広告業界の内幕を描きつつ展開する待望の最新長編ミステリー。
初めて手にした藤原さんの本です。直木賞作家とは露知らず・・・。勉強不足でした。本作は、週刊文春に連載されていた作品であり、著者が脱サラして初めて書いた本でもあります。

主人公は東邦広告営業部副部長・辰村。ある日、彼の部署を指名して大手メーカー大東電機より仕事の話が転がり込む。予算18億円ものプロジェクト。なぜ自分の部署が指名されたのか・・・。それにより社内の軋轢が生じるが、辰村は仕事を受けることを決心する。一方、このプロジェクトに関わったことから辰村の過去も動き始める。子供のころ幼馴染の二人−明子、勝哉−と共有する秘密。2つの物語が同時進行する中、辰村は部長・立花、部下・戸塚、平野らと共に最後の決戦=大東電機へのプレゼンに望む。

何より登場人物の描写がすばらしい。何事でも自分の始末は自分で負う辰村、抜群の決断力を持つ立花部長、途中入社ながら持ち前の探究心で成長していく戸塚など、メインの人物たちは当然のこととして、脇を固める人物たちも十分に書き分けられています。嫌なやつはとことん嫌なやつにってのもGoodです。

登場人物たちの会話が読み手を熱くしてくれます。辰村と立花部長の上司と部下として、男と女としての掛け合い。立花部長と派遣社員・平野とのやり取り。戸塚と東邦広告社長とのやり取り。そして、プレゼンでの戸塚の一言。際立っていたのは戸塚で、その一言一言には何度ぐっと来たことか。表向きの主役は辰村ですが、戸塚が陰の主役ですね。親の七光りで途中入社、どうせろくでなしのボンボンだと思っていたのですが・・・。格好よすぎです・・・。

2本立てのストーリーで両方とも同じくらいページが割かれていますが、どちらかというと主軸は辰村の過去の方だと思います。毎日思い出すわけではないけれど、ふとした弾みに思い出す過去。25年経ち、3人のたどり着いた先は全く違う世界だったけど、互いが互いを思いやりどこかで結びついていたと思わずにはいられません。結末の3人に希望が見えていたのには救われました。

プレゼンのラストは・・・、読んでみてのお楽しみ。賛否両論あると思いますが、僕はこれでよかったのだと思いました。

すっかり著者にはまってしまい、3冊ほど文庫本を買ってきました。もちろん「テロリストのパラソル」も。何でも、本作に登場した方が出ているそうで(刊行順が逆なので、あっちに出てた人がこっちに出ているというのが正しい)。今から楽しみにしています。

※読むことを決心させてくれたざれこさんの企画に感謝。

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【みなさまのご意見】