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「サラン 哀しみを越えて」荒山徹

サラン 哀しみを越えてタイトル:サラン 哀しみを越えて
著者  :荒山徹
出版社 :文芸春秋
読書期間:2007/01/24 - 2007/01/26
お勧め度:★★★

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秀吉の半島出兵による戦乱の中、両親をなくした朝鮮の少女「たあ」。しかしその後「たあ」の心の支えとなったのは日本の武将・三木輝景だった。輝景へのサラン(=愛)を抱きながら、「たあ」がたどる数奇な運命は―。愛と憎しみ、そして捨てられぬ「意地」を描いた荒山徹待望の作品集。

「耳塚賦」「何処か是れ他郷」「巾車録」「故郷忘じたく候」「匠の風、翔ける」「サラン 哀しみを越えて」の六編が収録されている短編集。

どの作品も、秀吉の朝鮮出兵ごろを描いている点は同じですが、全て独立した話となっています。共通して言えるのは、倭人にしても朝鮮人にしても、極々普通に生活してきた人びとが、歴史の動きと社会制度にいやがおうなく巻き込まれ、故郷や家族との辛い別れを経験するという点です。

表題作「サラン 哀しみを越えて」について。

少女「たあ」の村に踏み込んできた小西行長軍は、村の安全と引き換えに案内役を出せと要求。「たあ」の父が案内役を買って出たため、村は略奪を禁ずるとのお墨付きをもらった。おかげで、村は数度にわたる日本軍部隊の侵攻にも無事で過ごすことが出来、たあの父は村人から感謝される。

しかし、両班の義勇軍が村を占領すると村の者たちの態度は一変、「たあ」と母を売国奴と罵るのであった。「たあ」の身を心配したキリシタン武将・三木輝景は「たあ」を助けは、「たあ」を日本に連れてゆくのだが・・・。

力を持つ者、持たない者の差をまざまざと見せ付けられます。また一人の力がなんと無力なことか。そんな中にあって、「たあ」が三木輝景への愛と神への信仰を胸に、強く生き抜こうとする姿は胸を打ちます。

「たあ」が哀しみを越えて育てた子どもの名は・・・。ちょっとびっくりました。すごいというべきか、これでいいのかというべきか。「カノッサの屈辱」と似た空気を感じたのは私だけでしょうか・・・。

+++++

【みなさまのご意見】


「十兵衛両断」荒山徹

十兵衛両断タイトル:十兵衛両断
著者  :荒山徹
出版社 :新潮社
読書期間:2006/09/26 - 2006/09/28
お勧め度:★★★★

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柳生十兵衛は三たび死した! 徳川体制の裏で跳梁する朝鮮の陰陽師。おぞましき対日謀略、渦巻く恨、閃く魔剣。そして「剣の一族」が封印した、たとえ死すとも口外してはならない秘密とは。柳生三代の歴史小説巨編。

剣豪で知られる柳生十兵衛が三度死ぬとはどういうことか!? 帯の文章ですっかり引き込まれてしまいました。

朝鮮妖術ノッカラノウムにより鍛え上げた肉体を朝鮮人に奪われた柳生十兵衛。心は十兵衛、体は別人。頭ではわかっていても、体がついてこないもどかしさを感じ続ける日々を送る。そんなある日、実の父から命を狙われ、寸での所で辛くも逃げ出した。朝鮮人への復讐のため、体を鍛えなおすことを誓い、死をも恐れず鍛錬に明け暮れて十年。遂に以前と同等、いやそれ以上の肉体を作り上げた。そして、朝鮮へと渡る・・・。

ここから朝鮮妖術師との激闘を経て、宿敵へ・・・とつながるのかと思いきや、割とあっさり宿敵と出会いってしまいました・・・。そうです、短編なのでした。表題作「十兵衛両断」のほか、「柳生外道剣」「陰陽師・坂崎出羽守」「太閤呪殺陣」「剣法正宗溯源」と柳生一族つながりで展開する5編から構成されていました。

伝奇小説での見せ場である妖術シーンが少ないのが残念ですが、短編といってもそれぞれに読み応え十分です。特に「十兵衛両断」「太閤呪殺陣」「剣法正宗溯源」が秀逸。歴史的事実の上に、創造の部分をうまく織り込まれていて、うなること頻り。

さて、柳生十兵衛が三度死ぬどういうことだったのか? 当然、ここに書くわけにはいきませんので、ご自分で確かめてみてください。間違いなく「そういうことだったのか・・・」と感心させられるでしょう。

+++++

【みなさまのご意見】


「魔風海峡」荒山徹

魔風海峡(上)魔風海峡(下)タイトル:魔風海峡
著者  :荒山徹
出版社 :祥伝社文庫
読書期間:2006/06/01 - 2006/06/09
お勧め度:★★★★

上巻 → [ Amazon | bk1 | 楽天ブックス ]
下巻 → [ Amazon | bk1 | 楽天ブックス ]


慶長三年(一五九八)、前年からの朝鮮出兵も日本大苦戦のまま、秀吉を死の床に伏していた。突如、呼び出しを受けた真田幸村は、豊臣家再興を策す石田三成から驚くべき特命を拝した。「千年前、欽明帝が朝鮮半島に遺した任那日本府の隠し秘宝−百八体の黄金仏を発掘移送せよ!」忍びの勇士たちを引き連れ、幸村は朝鮮へ発った。一方、その計画を察知した家康側は、いち早く服部半蔵を半島へ派遣、半蔵は王子・臨海君、朝鮮忍者・檀奇七忍衆と手を携え、黄金仏の奪取を謀った。はたして秘宝の行方は?凄絶極まる日・朝忍法決戦の決着は…。デビュー大作「高麗秘帖」で喝采を浴びた新鋭が放つ第二弾!空前の構想と圧倒的筆力の時代伝奇巨編誕生。

いやー、これはすごい。すごすぎる。内容がぶっ飛びまくってます。

豊臣秀吉が病床に臥す中、家臣・石田光成は何とか豊臣家を再興させようと朝鮮半島に眠る隠し秘宝を発掘しようと画策する。呼び出しを受けたのは真田幸村。十人の勇士を引きつれ、朝鮮へと渡る。一方、その計画を察知したのは秀吉没後に天下の覇権を狙う徳川家康。行く手を阻むべく配下の服部半蔵を朝鮮へと派遣、朝鮮王子・臨海君、朝鮮忍者・壇奇七忍衆と協力し、秘宝の横取りを狙う。秘宝はどちらの手に?日朝忍法合戦が幕を開けた・・・。

日朝双方の忍者が繰り出す忍術・妖術の数々。忍術と呼ぶレベルを超え、超能力のレベルに達してます。巨人仏を操ったり、大砲を備える塔を操ったり、自分の目と耳で蝶を作って敵陣を偵察させたり、死人を復活させて敵軍と戦わせたりなどなど。なんでもありの世界。なかでも笑えたのが、敵の足の裏に秘密の文章を書くと、なぜか必ずその国の首都に行ってしまうという忍術。書かれた本人は迷っていることになど気づかずに、首都についてから気が付く、時間稼ぎの術です。敵に気が付かれないで秘密の文章を書けるなら、倒してしまえばいいのに、なんて言ってはいけません。。。

それら忍術を史実に紛れ込ませ、巧みに話を展開させていきます。歴史背景を詳細に書いているので、その分、展開がもたついているのがちょっと残念ですが(特に最後の方)、それでも十分楽しませてもらいました。

荒山さんの作品は、これで3作品目ですが、どれも外れなし。エンターテインメント作品が好きな方には、是非是非オススメしたい作家さんです。

+++++

【みなさまのご意見】
本のことどもさん
ねぶかどねざるさん('06/09/08追加)


「魔岩伝説」荒山徹

魔岩伝説タイトル:魔岩伝説
著者  :荒山徹
出版社 :祥伝社
読書期間:2006/02/12 - 2006/02/16
お勧め度:★★★★★

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第十二次朝鮮通信使の来日は目前。通信使存続派の勘定奉行柳生主膳正・儒者林大学一派と、その廃止を目論む白石党の暗闘を軸に、対馬、朝鮮、日光を舞台におくる歴史伝奇。
高麗秘帖」で伝奇小説を知り大変感動しました。で、引き続き読んだのが本書。刊行順に読むなら次は「魔風海峡」なんだけど、そのボリュームに"もし自分の好みに合わなかったら・・・"と尻込みしてしました。しかし本書を読んで、"著者の全作を早急に読むべしべし"、と思った次第です(推薦者の口調が移ってしまった)。

江戸時代に行われていた「朝鮮通信使」。朝鮮の識者との交流で新しい文化の風を取り入れようとするのが表向きの理由です。この物語は「朝鮮通信使」には裏の理由が存在し、しかもそれが李氏朝鮮と江戸幕府の存続に深く関係する、という大胆な発想から展開していきます。

主人公は遠山景元。父親が朝鮮交流最前線の対馬担当であり且つ白石党の残党であることから事件に巻き込まれていきます。白石党員を朝鮮に連れ帰るという名を持った少女・春香とともに、江戸から対馬へ、そして朝鮮へ、さらにはまた江戸へと移動に移動を繰り返します。道中、景元の前に立ちはだかるのは妖術を駆使する一味と隻眼の剣士・柳生卍兵衛。繰り広げられる妖術合戦、それとは対照的にさわやかささえ感じさせる景元と卍兵衛の立ち合い。読む手が止まらず、最後まで飽きることはありません。

そして、息をつく暇無い冒険劇の後の後日譚。ここでまた一驚きが・・・。史実と作り話がうまく溶け合っており、唸ってしまうこと間違いなしです。

未読の方はぜひぜひ読んで欲しい、オススメ度最上級の一冊です。

+++++

【みなさまのご意見】


「高麗秘帖 朝鮮出兵異聞」荒山徹

高麗秘帖タイトル:高麗秘帖 朝鮮出兵異聞
著者  :荒山徹
出版社 :祥伝社文庫
読書期間:2006/01/03 - 2006/01/10
お勧め度:★★★★

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慶長2年(1597)、再び朝鮮の地に上陸した秀吉の征明軍は雪辱に燃えていた。5年前(文禄の役)、亀船を操りわが水軍を撃破した敵将・李舜臣を必ずや斃す!水将・藤堂高虎、来島通総らは、舜臣を暗殺すべく密かに養成した秘密戦士団を放った。一方、講和派の将・小西行長はそれを阻止するため極秘作戦を開始、ついに舜臣を巻き込む三つ巴の死闘に突入した…。綿密な取材、類稀な着想、圧倒的筆力で放つ鮮烈の歴史ロマン巨編。
2006年は聖月さんオススメのこの本からスタート。「時間のあるときにどっぷりと浸かるのがよろし」ということだったので正月休みを利用しました。なかなかのボリュームと読み応え。

日本国内を統一した豊臣秀吉が海外にも覇権を伸ばそうと企てた2度の朝鮮出兵を文禄の役、慶長の役とよびます。陸戦では連戦連勝したものの、海戦では李舜臣率いる海軍に主導権を握られ、飢饉により兵糧が尽きたことも重なって撤退することとなった文禄の役(1592年)。本書はそれから5年後の慶長2年(1597年)、雪辱を誓っての再出兵した慶長の役を舞台とし、日朝の陸海戦を詳細に描いた伝奇小説です。

馬鹿な朝鮮政府の高官により左遷されていた李舜臣が再び海軍の将に付くまでは淡々と流れていましたが、その後は一変、妖術・忍術を駆使した李舜臣の暗殺計画や亀甲船の破壊計画などの数々の見せ場・山場があってページをめくる手が止まりませんでした。赴任地へ向かう李舜臣。彼を亡き者にしようと忍びを差し向ける日本の将。李舜臣を助けようとする降和兵や日本の将も出てきて入り乱れ。目がキラーンと光る忍術やくのいち(女忍者)が駆使する必殺戦法まで出てきたり。でも、最大の見せ場は何と言っても最後の海戦でしょう。たった13隻の船で200隻もの船と対峙する方法、地の利を生かした方法には驚きました。

読み始めたときはカタカナで振られた朝鮮語読みに戸惑ったのですが、読みにこだわらないで好きなように読み進めていくとスピード感がアップして面白さが増します。伝奇小説というのは始めて読んだのですが、史実だけでなくファンタジックな要素も盛り込まれていて、非常にエンタテインメント性が高い。正直聖月さんに教えていただくまで名前も聞いたことがない作家さんでしたが、新年早々いい出会いが出来たなぁと思います。もちろん次作以降も読み進めます。

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【みなさまのご意見】