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「エスケイプ/アブセント」絲山秋子

エスケイプ/アブセントタイトル:エスケイプ/アブセント
著者  :絲山秋子
出版社 :新潮社
読書期間:2007/05/07
お勧め度:★★★

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闘争と潜伏にあけくれ、20年を棒に振った「おれ」。だが人生は、まだたっぷりと残っている。旅先の京都で始まった、長屋の教会での居候暮らし。あやしげな西洋坊主バンジャマンと、遅れすぎた活動家だった「おれ」。そして不在の「あいつ」。あきらめを、祈りにかえて生きるのだ。―いつわりと挫折の日々にこそ宿る人生の真実を描く傑作小説。

表題にある通り「エスケイプ」「アブセント」の中編二編から構成されています。

「エスケイプ」の主人公は、職業革命家歴20年、御年40歳の江崎正臣。活動家を辞め、妹が経営する事になった託児所を手伝う為、故郷に帰ることとなった。帰郷する猶予期間に旅に出たくなり、行き先を大阪と決めて電車に乗ったが、「あいつ」がいた京都が気になり途中下車をする・・・。「アブセント」は、「あいつ」の物語。「エスケイプ」を補っているお話です。

自分が長々と続けてきたことが、果たして無駄ではないといえるのか。活動家を辞める(これがエスケイプ?)にあたり正臣が考えたこと。事は違えど、そんなこと誰にだって言えることではないでしょうか。まぁ、考えても答えは出てこないと思うので、僕は考えたりしませんが・・・。

神父のパンジャマンがいい味を出してます。他人を愛せないくせに、他人に愛を説く神父。外人だからと神父になったという安易さ。主人公を含め、このいい加減さ、ダメ加減さの描き方が絲山さんの真骨頂かと。

「アブセント」は、特になくてもよかったかな。ただ、ラストはきれいに収まった感があり、その点はよかったです。

ほぼ全ての著作を読んでいるのに、いまだ掴みきれません。ただ、よくわからなくても読み続けてしまうと思います。

+++++

【みなさまのご意見】


「沖で待つ」絲山秋子

沖で待つタイトル:沖で待つ
著者  :絲山秋子
出版社 :文藝春秋
読書期間:2006/12/04
お勧め度:★★★

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仕事のことだったら、そいつのために何だってしてやる。そんな同期の太っちゃんが死んだ。約束を果たすべく、私は彼の部屋にしのびこむ-。仕事を通して結ばれた男女の信頼と友情を描く表題作のほか、「勤労感謝の日」を収録。

同期入社の「太っちゃん」と「私」の友情を描く表題作と、大安吉日にお見合いをした36歳独身・無職女性の心理を描く「勤労感謝の日」の2編が収録されています。

同期って何だか特別なんですよね。僕の場合、新入社員研修で大阪に行った時の同期五人が特別な存在。基本的に会社の愚痴が多いのが難点だけど何でも言い合えるし、同じ釜の飯を食った連帯感がありますね。年に数度しか会わないけれど、奴らだったら理解してくれる、と思えて安心感もあります。

「太っちゃん」と「私」も一緒に福岡に配属されて「同じ釜の飯」という感覚なのかなぁと。それか、何も知らない土地で一緒に戦った「戦友」という感覚か。僕の同期に対する思いよりも、もっと強い思いを次の一文から感じました。

「仕事のことだったら,そいつのためになんだってしてやる。それが同期ってものだと思う」

僕にとって同期は特別な存在ですが、果たしてそこまで言えるかどうか・・・。ちょっぴりうらやましい関係です。

どっちかというと、「勤労感謝の日」の方が好みでした。「沖で待つ」は静かな作品でしたが、「勤労感謝の日」は主人公女性の毒舌っぷりがいつもの絲山節顕在という感じで。ただ、蚕の話が聞いていて痛々しかったですが。

男っぽいけど弱さも持ち合わせている女性を描いた作品でした。それほど深くは感情移入は出来ませんでしたが(僕が男だからかも)、悲哀や辛さは伝わってきました。

+++++

【みなさまのご意見】


「ニート」絲山秋子

ニートタイトル:ニート
著者  :絲山秋子
出版社 :角川書店
読書期間:2006/08/29 - 2006/08/30
お勧め度:★★

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現代人の孤独と寂寥、人間関係の揺らぎを完璧な文体で描いた傑作短篇集。
かけだしの女性作家と、会社を辞め、引きこもりをつづけて困窮を極める青年との淡い関係を描く表題作。大阪の彼女と名古屋の育ての母との間で揺れる東京のホテルマンを描いた「へたれ」他全5篇。気鋭の傑作短篇集。

絲山さんの本は大体読んでいて、読むたび面白いって思うんですけど、でも読み終わってふと何を言いたかったのかを考えてみると、きちんとした答えが浮かばない。結局あまり理解していないと思うんですよ。

それでも「イッツ・オンリー・トーク」や「逃亡くそたわけ」は、自分なりに消化したんですけど、この本は・・・うーん、よくわかんない。「ニート」「ベル・エポック」「2+1」「へたれ」「愛なんかいらねー」の五編が収録されている短編集。

表題作である「ニート」と「2+1」は続き物で、生活が困窮している"キミ"にお金を出す"私"。私の設定が作家なので、どうしても絲山さんを重ねちゃいます。"キミ"を温かく見守っているとは思えず、お金を出している自分が好きというような自己満足しか感じられませんでした。絲山さんの真意は何?

「ベル・エポック」は、近くに住んでいる友達の引越しを手伝う私。心温まる話かと思いきや・・・。オチが割と好きかも。「へたれ」は、遠距離恋愛する彼女に会うための新幹線の中であれこれ考える男。率直な感想は、タイトルそのまま"ほんとへたれだなぁ"。「愛なんかいらねー」は、ほんと愛を感じなかった。ただ、読んでいて気分が悪くなることもなくて、こういう世界もあるのかなと割と冷静でした。

結局のところよくわかんなかったです、この世界は。これからもこんな本ばかり出たら読むのは辛いなぁ。でも、何となく気になるから読んじゃうんでしょうけど。

+++++

【みなさまのご意見】


「スモールトーク」絲山秋子

スモールトークタイトル:スモールトーク
著者  :絲山秋子
出版社 :二玄社
読書期間:2006/05/08
お勧め度:★★★

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「じゃ、回り道してやろうぜ。どうせこの世の全てが回り道なんだ」 6台のクルマをめぐる、回復と喪失の物語。車好きの楽しめる小説。さらに書下ろしエッセイ、徳大寺有恒との対談も収録。
2004年5月から自動車雑誌「NAVI」に連載されていた連作短編小説。雑誌の内容にちなみ、車にまつわる短編で全6編収録されています。40手前の絵描きの女性・ゆうこと、その元彼である音楽プロデューサー・本条の再会から別れまでを描いており、本条が乗っている車が毎回異なるという設定。

絲山さん自身がフィアット乗りということもあってか、出てくる車は全部外車で、しかも一般庶民には手の届かないような高級車ばかり。具体的に挙げてみると、TVR Tuscan、Juguar X8、Chrysler Crossfire、SAAB 9-3 Cabriolet、Aston Martin Vanguish、Alfa Romeo Alfa GT、そしておまけとしてRX-8。TVR Tuscanは、西部警察のロケ中に起こった人身事故で一躍有名になったので知っている方もいるでしょう。コストパフォーマンスを売りとする日本車と違い、存在そのものに意味があるような車が登場します。出てくる車のことを知らなくても十分に楽しめると思いますが、やはり知っていた方が楽しめるかなぁと。

倦怠感の漂う文章はいつもの著者の文章そのもの。業界人のイメージそのものの本条と、そんな男と付かず離れずの関係を繰り返しているゆうこ。すべてにだらしない男と、それを拒絶できない女を書かせたら、著者の右に出るものはいないのではないかな。車に男、そして人生を重ねて、ばさばさと言い捨ててゆくゆうこの言動が心地よく、それに対する本条の受け答えが軽快なテンポで進みます。

横書きということもあり多少読みにくい点と巻末の対談であまり話が噛み合っていない点が気になりましたが、途中途中に挟まれたエッセイもあって十分に楽しむことが出来ました。


「逃亡くそたわけ」絲山秋子

逃亡くそたわけ タイトル:逃亡くそたわけ
著者  :絲山秋子
出版社 :中央公論新社
読書期間:2005/12/31
お勧め度:★★★★

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21歳の夏は一度しか来ない。あたしは逃げ出すことにした。
軽い気持ちの自殺未遂がばれて、入院させられた病院から。
逃げるのに思いつきで顔見知りを誘った。24歳の茶髪で気弱な会社員。
すぐに「帰ろう」と主張する彼を脅してすかして車を出させた。東へ。そして南へ。
おんぼろ車で九州の田舎町を駆け抜けるふたりの前にひろがった暑い夏の物語。
この本が2005年ラスト本となりました(記事のアップはこんな時期になりましたが)。直木賞候補作。

精神病院から車で逃亡する若い男女の九州縦断逃避行を描いたロードノベル。21歳の花ちゃんは躁病を患っている。毎日飲まされる薬に嫌気が差し、病院を抜け出すことにした。病院で顔見知りのなごやんを誘って。なごやんのぼろぼろな車で東へ、そして南へ。二人の逃亡の先にあるものとは・・・。

ご自身もかつて躁鬱病を患っていたこともあるせいか、病気への距離感が程よく感じます。難しい題材と思うのですがあまりに誇張しすぎもせず、美化したり悪く書き過ぎたりもせず。友達以上恋人未満の男女といい、この辺のバランス感覚は絲山さんの才能ですね。

ただ、タイトルのインパクトと比較して、内容にさほどインパクトがない点が不満。自分の読解力が足りないせいかもしれないけど。再読したらもう少し深いところまで読み取れるかなぁなんて思います。

ご当地観光案内のようで、ただただ単純に楽しみました。なかでも「椎葉村」という地名に反応。「椎葉村」は入社直後、同期と旅行したときに泊まった村でした。花ちゃん、なごやんと同じく車での旅行(逃避行ではありません)。ここで食べたサクラマスはとてもおいしかったなぁ・・・。

【関連ページ】

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【みなさまのご意見】


「袋小路の男」絲山秋子

袋小路の男タイトル:袋小路の男
著者  :絲山秋子
出版社 :講談社
読書期間:2005/10/01 - 2005/10/02
お勧め度:★★★

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「あなた」とは指一本触れないままの12年間、袋小路に住む男にひたすら片思いを続ける女を描いた究極の純愛小説。川端康成文学賞受賞の表題作を含む3篇を収録した短篇集。「群像」掲載を単行本化。
表題作「袋小路の男」「小田切孝の言い分」「アーリオオーリオ」の3編からなる短編集。前2編は続き物で女性の視点、男性の視点に立ったもので基本的には同じ時間でのお話、3編目は独立したお話となっています。また、表題作は帯によると川端康成文学賞受賞の純愛小説だそうです。

んー、これって純愛小説なのかな。10年以上もの間大谷日向子と小田切孝は付かず離れずを繰り返し、お互いに思いあっていながらも手を触れることもない。これだけ聞くと純愛かもしれないけど、その間に別の男性(女性)と付き合ったりしているし。お互い寂しいときに都合よく間を埋めているように見えるのですが・・・。

最初のころは愛だったものが今は情だけでくっついている、そんな風に思えます。なんだかもどかしい二人。はっきりしちゃえよと何度思ったことか。

男女間の友達関係がなりたたない、という前提でこの話は始まっているのでしょうか。同姓とよりも異性との方がうまく話できたり自然に振る舞えたりする人もいると思うのですが。ちょっとなぞです。

とまぁ、登場人物にはあまり感情移入できませんが、文体や醸し出す雰囲気は嫌いではないです。読了感もなかなかよろしい。ただ絲山さんの本ならばこの本より「イッツオンリートーク」や「海の仙人」をお薦めしたいです(「逃亡くそたわけ」は未読です)。

+++++

【みなさまのご意見】


「海の仙人」絲山秋子

海の仙人タイトル:海の仙人
著者  :絲山秋子
出版社 :新潮社
読書期間:2005/08/09
お勧め度:★★★★

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背負っていかなきゃならない最低限の荷物−それは孤独。海辺の街にひっそりと暮らす青年とふたりの女と出来そこないの神様・ファンタジーが奏でる切ない愛の物語。『新潮』掲載を単行本化。第130回芥川賞候補作。
「イッツ・オンリー・トーク」に続き2作目となる絲山さんの作品。本作も芥川賞の候補作となった話題作となっています。

宝くじで3億円当てたのを機に勤めを辞め、敦賀にこもって生活を始めた河野。そこに現れた「ファンタジー」という神。願いを叶えてくれるでもなく、ただそこにいるだけの神様です。この二人に、ふらっと一人旅でやってきた女性・かりん、元同僚で河野に好意を寄せる片桐が加わり物語は静かに進行していきます。

前作もそうでしたが、重いテーマを軽く描くのが著者の特徴。今回のテーマは帯にもある通り"孤独"でした。幼少期がトラウマとなってなり、かりんに心をさらけ出せない河野の孤独。自分の健康を気に留めず仕事に邁進するかりんの孤独。河野に好意を寄せる片桐の孤独。それぞれ淡々と軽めに描かれているのですらすら読めてしまうけど、読み返してみると行間から深いことを想像してしまい、ぎゅっと胸を締め付けられるような感じを受けました。

「ファンタジー」が別に神じゃなくても話は成り立ったんじゃないか?とかそれにしてもあまりに軽く書かれすぎているのでは?とか思う点はいくつかあるのだが、まぁあまり書き過ぎると著者の特徴を殺しちゃうなと思うし、些細なことには目を瞑って独特で不思議な文章をただゆるゆると読めばいいのだとの結論に至りました。

あっ、でもかりんの胸の内はもっと掘り下げて欲しかったなぁ。

【関連ページ】

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【みなさまのご意見】


「イッツ・オンリー・トーク」絲山秋子

イッツ・オンリー・トークタイトル:イッツ・オンリー・トーク
著者  :絲山秋子
出版社 :文藝春秋
読書期間:2005/07/23
お勧め度:★★★★

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引越しの朝、男に振られた。東京・蒲田−下町でも山の手でもない、なぜか肌にしっくりなじむ町。元ヒモが居候、語り合うは鬱病のヤクザに痴漢のkさん。いろいろあるけど、逃げない、媚びない、イジケない、それが「私」、蒲田流。おかしくて、じんわり心に沁みる傑作短篇集。第96回文学界新人賞受賞。十年に一度の逸材、鮮やかなデビュー作。
逃亡くそたわけ」で第133回直木賞候補に挙がった著者のデビュー作。この本で第96回文学界新人賞受賞、そして第129回芥川賞候補となっています。デビュー作で候補になってから3回連続芥川賞候補になり落選、直木賞も落選と賞には恵まれてない感ありですが、しかしこれほど落選続きだと逆に気になるのが人間の心理?!。

「直感で蒲田にすむことにした」出だしのこの一文にやられました。何で"直感で"しかも"蒲田"なんだろうと。それが気になって一気読み。表紙からほのぼのとしたお話を想像していたのですが、予想とは180度違って結構ヘビーです。

躁鬱病を患う無職の女性が主人公。都議を目指すEDの同級生、鬱病のヤクザ、ネットで知り合った痴漢など主人公の周りにいる男性陣との係わり合いを描いています。男性との微妙な距離感・空気感を嫌い、簡単に寝てしまう主人公ですが、実は普通の愛情には飢えていて・・・。淡々とした主人公の語りのおかげで重たくは感じさせません。かといって、現実感がないかというとそうでもなく、割り切りや退廃的な部分が病気を患う主人公にふさわしくて妙にリアル。うまくは言えないけれど、何となく主人公の気持ちはわかるし、普通に受け入れられました。

もう一編収録されている「第七障害」は、ほんとに同じ人が書いたのかなぁと疑いたくなるほど打って変わってすがすがしい作品。馬術競技で愛馬を亡くし心の傷を抱えた女性の恋愛と蘇生を綴っています。乗馬クラブ時代にはライバルであった男性・篤、元カレの妹・美緒など登場人物も魅力的。ラストでの篤との今後を予感させる描写がとても心地いいです。

どちらも甲乙付けがたい2編でした。デビュー作にしてその懐の深さを見せてくれて、次作以降がとても楽しみ。すでに「海の仙人」は入手済みなので読むのが待ち遠しいです。

【関連ページ】

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