200905
Tuesday
三十七歳の私は、二度目の妻とその連れ子の二人の娘とありふれた家庭を築く努力をしていた。しかし、妻の妊娠を契機に長女は露悪的な態度をとるようになり、『ほんとうのパパ』に会いたいと言う。私も、長女を前妻との娘と比べてしまい、今の家族に息苦しさを覚え、妻に子供を堕ろせと言ってしまう―。「家族」とは何かを問う感動の長篇小説。
200603
Monday
授業で知った「トラウマ」という言葉に心を奪われ、「今の自分に足りないものはこれだ」と思い込んだ平凡な高校生・優は、「トラウマづくり」のために、まだ死んでもいない同級生の墓をつくった。ある日、その同級生まゆみは彼の前に現れ、あらぬ記憶を口走ったばかりか恋人宣言してしまう−。「かっこ悪い青春」を描ききった筆者のデビュー長編小説。重松清デビュー作。もう10年以上も前のこの作品、荒削りながらも現在の重松さんを感じさせる文章です。
200602
Wednesday
偶然再会した少年の頃のヒーローは、その後、負けつづけの人生を歩んでいた。もう一度、口笛の吹き方を教えてくれたあの頃のように胸を張って笑って欲しい−。家庭に職場に重荷を抱え、もう若くない日々を必死に生きる人々を描く五篇を収録。さり気ない日常の中に人生の苦さをにじませる著者会心の作品集。表題作含む五編を収録。この前に読んだ重松作品がとても重かったので、気軽に読めそうな短編集を選んでみました。
200601
Wednesday
引きこもり、家庭内暴力、放火、借金、一家離散……。14歳の少年・シュウジが背負った余りに苛烈な運命。今秋、映画公開が決定した、直木賞作家、畢生の衝撃作、待望の文庫化!(上巻)表紙が気にはなっていたけれど、軽い気持ちで手を出してはいけない雰囲気が感じていて読むのをためらってました。が、月一重松本を続けてきて1年の締めくくりに思い切ってこの本を選びました(読了したのは昨年です)。結果・・・、かなりきつかった。「精神的体力があるときに読んだほうがいい」とコメントをもらいましたが読了後だったので活かせず・・・。
兄の放火事件をきっかけに一家離散に追い込まれた15歳のシュウジは、故郷を発ち、大阪、そして東京へと向かう。今秋、映画公開の衝撃の超大作、感動のラストシーンへ!(下巻)
200512
Monday
名前はきよし。君によく似た少年。言葉がちょっとつっかえるだけ。話はある聖夜、ふしぎな「きよしこ」との出会いから始まる。たいせつなことを言えなかったすべての人に捧げる、少年小説。月一重松本継続中。今回は「きよしこ」です。連作短編集。重松清で「きよしこ」か、著者自身の話?と思い読み始めましたが、その通りだったようです。
200510
Thursday
死んじゃってもいいかなあ、もう……。38歳・秋。その夜、僕は、5年前に交通事故死した父子の乗る不思議なワゴンに拾われた。そして・・自分と同い歳の父親に出逢った。時空を超えてワゴンがめぐる、人生の岐路になった場所への旅。やり直しは、叶えられるのか・・?「本の雑誌」年間ベスト1に輝いた傑作。妻の浮気、息子の家庭内暴力、父親との不仲、リストラ・・・。自暴自棄になった主人公の前に現れた一台の車、そこに乗るのは5年前にドライブ中事故死した親子であった。主人公はその車に乗せられて過去へのドライブへと出かけてゆく・・・。今までの重松さんにはないファンタジックな設定ですが、内容はやはり重松さんらしい現実を見つめ直させるものでした。
200510
Monday
15歳。頭のなかにあることといったらただ一つ、かっぽん−。憧れと妄想に身を持て余す思春期の少年たちの、ひたすらな性への関心をユーモラスに描いて、もどかしい青春の痛みを鮮やかに蘇らせた表題作のほか、デビュー間もない時期に書き下ろされた奇想天外な物語など、全8編を収録。これ1冊で作家・重松清のバラエティと軌跡が存分に味わえる著者初、待望の文庫オリジナル短編集。巻末には貴重なロングインタビュー2本も併録。重松さん初期の作品集。それだけを理由に集められた短編なので統一感はまったくありませんが、自分の興味に任せて書き連ねていた初期の重松さんを知る上でとても興味深いです。A面B面構成、巻末のロングインタビューなど、本文以外でも楽しめる作品です。
200509
Tuesday
開発から30年、年老いたニュータウンで迎えた定年。途方に暮れる山崎さんに散歩仲間ができた。「ジャージーは禁物ですぞ。腰を痛めます。腹も出ます」先輩の町内会長、単身赴任で浦島太郎状態のノムさん、新天地に旅立つフーさん。自分の居場所を捜す四人組の日々の哀歓を温かく描く連作。「帰ってきた定年ゴジラ」収録の完成版。職場までの通勤時間が2時間。そんな郊外のニュータウンに住む山崎さんが主人公。定年を迎え、暇をもてあまし散歩を始めた山崎さんが同じく会社を定年した同じ街に住む3人の"ゴジラ"と出会うところから物語りは始まります。(ゴジラの意味は本書中にあります)
200507
Friday
発展の望みを絶たれ、憂鬱なムードの漂うニュータウンに暮らす一家がいる。1歳の息子を突然失い、空虚を抱える夫婦がいる。18歳で結婚したが、夫にも義母にもまともに扱ってもらえない若妻がいる…。3組の家族、ひとりひとりの理想が、現実に浸食される。だが、どんなにそれが重くとも、目をそらさずに生きる、僕たちの物語−。「カラス」「扉を開けて」「陽だまりの猫」。第8回山本周五郎賞候補作。文庫化される度に面白いあとがきを付けてくれる重松さんですが、今回のあとがきは是非是非読んでいただきたい。重松さんの葛藤と「小説家」として思いをひしひしと感じることが出来ます。
200507
Wednesday
日曜日、お父さんがいてお母さんがいて「僕」がいて、お兄ちゃんとお姉ちゃんは恋人がいて―。ある町の春夏秋冬、日常の些細な出来事を12の短編小説でラッピング。忘れかけていた感情が鮮やかに蘇る。夜空のもとで父と息子は顔を見合わせて微笑み、桜の花の下、若い男女はそっと腕を組み…。昨日と同じ今日なのに、何故だか少し違って見える。そんな気になる、小さな小さなおとぎ話。12編からなる短編集。日常の些細な出来事にまで眼を配る重松さんらしい作品。タイトルの「日曜日の夕刊」は、家族が集う日曜の夕食時を意識してのこと。つまりテーマは家族だ。