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「嗤う伊右衛門」京極夏彦

嗤う伊右衛門タイトル:嗤う伊右衛門
著者  :京極夏彦
出版社 :角川文庫
読書期間:2005/08/27 - 2005/08/31
お勧め度:★★★★

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疱瘡を病み、姿崩れても、なお凛として正しさを失わぬ女、岩。娘・岩を不憫に思うと共に、お家断絶を憂う父・民谷又左衛門。そして、その民谷家へ婿入りすることになった、ついぞ笑ったことなぞない生真面目な浪人・伊右衛門−。渦巻く数々の陰惨な事件の果てに明らかになる、全てを飲み込むほどの情念とは−!?愛と憎、美と醜、正気と狂気、此岸と彼岸の間に滲む江戸の闇を切り取り、お岩と伊右衛門の物語を、怪しく美しく蘇らせる。四世鶴屋南北『東海道四谷怪談』に並ぶ、著者渾身の傑作怪談。
初の京極堂シリーズ外作品となる本作は、京極流「四谷怪談」です。よく耳にするお話のはずなのですが、実のところ知っているのはお岩さんというひどく醜い女性が登場するというくらい。「一枚、二枚・・・」と皿を数える話でしたっけ?あっ、これは「番町皿屋敷」か・・・。まぁ、全く知らなくても十分楽しめます。

怪談というよりは岩と伊右衛門の悲しい恋の物語。伊右衛門のことを思いつつも逆の態度を取ってしまう岩。同じく伊右衛門も岩のことを深く思いながらも入り婿の引け目を感じて煮え切らない態度を取ってしまう。本当に不器用な二人です。

今までのイメージを覆す岩という女性。武家の娘としての誇りが高く、一途な女性。気丈に振舞う様は、なんだか痛々しささえ感じます。しかし、この姿に本当の美しさは外見などではなく心にあるということも思い知らされます。

岩と伊右衛門だけでなく、脇を固める顔ぶれもとても魅力的。中でも小股潜りの又市と筆頭与力の伊東喜兵衛が際立ってます。弁舌軽やかで人を騙すことにも長けている又市、人の心根を見透かす術にも長けています。岩とのやり取りが一興。悪行三昧を繰り返す上、腕も立つという喜兵衛。伊右衛門と岩の深い絆は浮き立たせるのに十分なほどのどす黒い男です。読んでいてどんどん不愉快になりますが、伊右衛門の対極に立つ人物として欠かせないです。

京極さんの本としては薄い本書。その厚さでなかなか手が伸びない方も京極本の入門書として読んでみるのはいかがでしょうか。妖怪など出てきませんが、京極さんの持ち味であるおどろおどろしさ、きれいな文章(相変わらず漢字が難しい・・・)を堪能することが出来ると思います。

+++++

【みなさまのご意見】
日記風雑読書きなぐりさん('05/09/15追加)
本を読む女。改訂版さん('05/09/15追加)
ゆうきの読書日記&矯正日記さん('06/01/20追加)


「絡新婦の理」京極夏彦

絡新婦の理タイトル:絡新婦(じょろうぐも)の理(ことわり)
著者  :京極夏彦
出版社 :講談社ノベルス
読書期間:2005/05/09 - 2005/05/19
お勧め度:★★★★

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当然、僕の動きも読み込まれているのだろうな―二つの事件は京極堂をしてかく言わしめた。房総の富豪、織作家創設の女学校に拠る美貌の堕天使と、血塗られた鑿をふるう目潰し魔。連続殺人は八方に張り巡らされた蜘蛛の巣となって刑事・木場らを眩惑し、搦め捕る。中心に陣取るのは誰か?シリーズ第五弾。(文庫版より)
シリーズ第5作。真犯人「蜘蛛」によって張り巡らされた罠の糸からは、誰一人として逃れることが出来ない。京極堂をしてまでも。

「あなたが−蜘蛛だったんですね。」

今までの作品にはない、なかなか象徴的な書き出しだ。黒衣の男と桜色の女が対峙するシーン。黒衣の男=京極堂とすぐにわかるのだが、女は誰だかわからない。本作では、大きく分けて2つの事件が同時並行で進行していく。木場修太郎が追う「目潰し魔」の事件、全寮制の女学校聖ベルナール女学院で起こる「黒い聖母の呪い」の事件がそれだ。どちらも早々に犯人は判明する。しかし動機がわからない。なぜ犯人は殺人を続けるのか。そして犯人を裏で操る「蜘蛛」の意図とは。

真犯人により張られた糸は、それが切れることも考えて直接無関係な人間まで張られている。関係者が次々に屍となっていく様子を眺める「蜘蛛」。そうまでして自分の我を通して後に残ったものは、果たして「蜘蛛」にとって幸せなものだったのか。甚だ疑問が残るし、京極堂はこの結末に苦々しさを感じているに違いない。

完成度の点では「魍魎の匣」と肩を並べるくらい素晴しいと思うのだが、過去の事件が今回の原因の一因となっている件があるのがやや残念。リンクするくらいなら良いけれど、核心はやっぱり内々で閉じていなくちゃならないのはないか。

最後まで読み終えると、否が応でも本書の冒頭に戻らされることとなる。これも蜘蛛の、いや、京極さんの計算通りか。

+++++

【みなさまのご意見】


「鉄鼠の檻」京極夏彦

鉄鼠の檻タイトル:鉄鼠の檻
著者  :京極夏彦
出版社 :講談社ノベルス
読書期間:2005/02/01 - 2005/02/11
お勧め度:★★★

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忽然と出現した修行僧の屍、山中駆ける振袖の童女、埋没した「経蔵」…。箱根に起きる奇怪な事象に魅入られた者―骨董屋・今川、老医師・久遠寺、作家・関口らの眼前で仏弟子たちが次々と無惨に殺されていく。謎の巨刹=明慧寺に封じ込められた動機と妄執に、さしもの京極堂が苦闘する、シリーズ第四弾。

京極作品第四弾。どんどん長くなってとうとう800ページ越え(ノベルス版)。今回のテーマは「禅」。ページ数に比例して、難解さもどんどんパワーアップです。

恥ずかしながら「禅」について全く理解できませんでした。「禅は言葉で説明できないもの」そう京極堂は言っております。じゃ、どういう風に理解すればいいのか。それこそ禅寺にでも行ってみるしかないのか・・・。

まぁしかし、禅を理解できなくても楽しむことは出来ました。あいかわらず榎木津はやりたい放題だし、関口はボケボケしているし。それにしても県警の捜査方法が右往左往しているのがもどかしくてもどかしくて。俺に仕切らせろ!って感じ。

次作は京極作品中で最も長いと言われる「絡新婦の理」。これ以上難解になられるともう理解できないかもしれない。んー、ちょと不安になってきたぞ・・・。

+++++

【みなさまのご意見】
ゆうきの読書日記さん
Honey Vanityさん
怪夢ノ読書日記さん
ひびせっしゅ。さん
書評さん
xina-shinのぷちシネマレビュー?さん
BLASTさん
たこの感想文さん('06/07/14追加)ミステリー倶楽部さん('07/02/18追加)


「狂骨の夢」京極夏彦

狂骨の夢タイトル:狂骨の夢
著者  :京極夏彦
出版社 :講談社ノベルス
読書期間:2005/01/12 - 2005/01/21
お勧め度:★★★★

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夫を四度殺した女、朱美。極度の強迫観念に脅える元精神科医、降旗。神を信じ得ぬ牧師、白丘。夢と現実の縺れに悩む三人の前に怪事件が続発する。海に漂う金色の髑髏、山中での集団自決。遊民・伊佐間、文士・関口、刑事・木場らも見守るなか、京極堂は憑物を落とせるのか?著者会心のシリーズ第三弾。

京極作品第三弾。いくつもの事件が「髑髏」をテーマに絡み合い、それを京極堂が解きほぐす。

本作はこれまでの2作とは異なり、叙述のトリックを用いていますね。釣堀屋主人・伊佐間、そして教会での牧師・白岡と元精神科医・降旗に朱美が語った内容、朱美の夫・宇田川崇が関口と敦子に語った内容で、読者に「四度夫の首を切り落とした女」を印象付けてます。ここで感じる微妙な違和感が、実は物語の真相に大きくかかわるのだが・・・。

正直京極堂の謎解きが始まるまでは退屈でした。が、それが始まると面白い面白い。自分が引っかかっていた部分がすべて解き明かされてゆく快感。

前作「魍魎の匣」は一連の事件が実は別々の事件だった。今回は別々と思われる事件が実は繋がっている。これまでの読者に対しては、「魍魎の匣」をも伏線にしているのか。なんて、ちょっと考えすぎかなぁ。

今回ももちろん面白いんだけど、前作と比べるとスケール感が劣っていて、やや都合のいい設定だなと感じたので星四つです。それにしてもだんだん関口の存在感が薄れてきているのは気のせいか・・・。

+++++

【みなさまのご意見】
ゆうきの読書日記さん
リサイクルさん
Honey Vanityさん
power of loveさん
たこの感想文さん('06/04/15追加)ミステリー倶楽部さん('07/02/19追加)


「魍魎の匣」京極夏彦

魍魎の匣タイトル:魍魎の匣
著者  :京極夏彦
出版社 :講談社ノベルス
読書期間:2004/12/17 - 2004/12/26
お勧め度:★★★★★

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匣の中には綺麗な娘がぴったり入ってゐた。箱を祀る奇妙な霊能者。箱詰めにされた少女達の四肢。そして巨大な箱型の建物―箱を巡る虚妄が美少女転落事件とバラバラ殺人を結ぶ。探偵・榎木津、文士・関口、刑事・木場らがみな事件に関わり京極堂の元へ。果たして憑物は落とせるのか!?日本推理作家協会賞受賞作。

京極さん第2作にして、推理作家協会賞受賞作。この作品で一気にメジャーへ上り詰めたと言っていいのでしょうね。

多発する美少女バラバラ殺人事件。魍魎を祓ってくれるという霊能者。奇妙な箱型の建物。常に手袋を嵌めた小説家。前作以上に謎が満載。どれもこれもネタとして、それ一つで十分満足いくものだけれど最後に修練していくのはまさに見事でした。

タイトルに使われている「匣」には、いくつもの設定がなされています。建物としての「箱」、霊能者が用いるのは「御筥様(おんばこさま)」、そしてバラバラ殺人犯が使う「匣」。その中でも特に「箱」には驚かされました。戦後のこの時代に、このような壮大な試みを行った人物がいたとしたら、間違いなく歴史残っていたであろうと思います。奇人としてかもしれませんが。

京極作品はまだ2作しか読んでませんが、文章がとても美しいですね。流れる文章と言っていい。今作ではその美しい文章によって、京極堂の周りに起こる奇妙な事件がより恐ろしく感じました。「みつしり」という擬態語が、とても不気味で印象に残ってます。

今回の京極堂の薀蓄は「超能力者、占い師、霊能者、宗教者の違い」と「正常と異常の基準」でした。どちらもためになるお話でした。大満足。

+++++

【みなさまのご意見】
Macutieさん
海に塩を撒く.さん
Honey Vanityさん
ROLLIN'さん
上七軒日記さん
読書感想文ブログさん
うだうだぶつぶつさん('05/03/28追記)
読んだモノの感想をぶっきらぼうに語るBlogさん('05/12/09追加)本を読もうさん('07/05/26追加)


「姑獲鳥の夏」京極夏彦

姑獲鳥(うぶめ)の夏タイトル:姑獲鳥の夏
著者  :京極夏彦
出版社 :講談社ノベルス
読書期間:2004/12/4 - 2004/12/9
お勧め度:★★★★

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その分厚さゆえになかなか手が出なかった京極さんの本。映画化も決まったし、どっぷりとその世界につかるのもよいかなぁと思って読書を開始しました。何より大きな要因は、実家に本があったことかもしれませんが、、、。

この世には不思議なことなど何もないのだよ―古本屋にして陰陽師が憑物を落とし事件を解きほぐす人気シリーズ第一弾。東京・雑司ケ谷の医院に奇怪な噂が流れる。娘は二十箇月も身籠ったままで、その夫は密室から失踪したという。文士・関口や探偵・榎木津らの推理を超え噂は意外な結末へ。

書店の主にして陰陽師である京極堂、優柔不断な作家・関口、勘のするどい探偵・榎木津、警視庁刑事・木場など、魅力的なキャラクターが勢ぞろいの本作。

おもしろいじゃないですか!冒頭から数十ページに渡り延々と続く京極堂と関口の議論。何のことやらよくわからずに何とか読み進めていったのですが、ここを乗り切れるかどうかがこの作品(シリーズ)に嵌まり込めるか決まりそうですね。あおちゃんは嵌まり込んでしまいました。読んでいるときももちろん面白いんだけど、本を閉じたときに目の前に浮かぶ情景と余韻が何とも奇妙な感じ。

こんなに分厚い本なのに、理論に全く破綻がないのが驚異的。この作品の初版は10年前の1994年。京極さんとあおちゃんの年齢差が10歳。ということは、今のあおちゃんの年齢のときに、こんな本を書き上げたのか・・・。才能の違いに脱帽・・・。

面白いし是非是非みんなにも読んでもらいたいんだけど、その面白さやあらすじを伝えるのがとっても難しい本ですね。いろいろな事が複雑に絡み合っていて。それこそ京極堂ばりに弁舌軽やかじゃないと伝えられないかも。

説明ベタなあおちゃんとしては、これくらいしかいえません。「騙されたと思って読んでみてはいかがですか?」

+++++

【みなさまのご意見】
Honey Vanityさん
ロックルのエンタメ日記さん
PLVS VLTRAさん
under constructionさん
徒然なるままに。さん
ドクログさん
Vom Weblogさん
たこの感想文さん('05/08/31追加)