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「震度0」横山秀夫

震度0タイトル:震度0
著者  :横山秀夫
出版社 :朝日新聞社
読書期間:2005/07/24 - 2005/07/25
お勧め度:★★★★

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阪神大震災のさなか、700厠イ譴N県警本部の警務課長の不破義人が失踪した。県警の事情に精通し、人望も厚い不破がなぜ姿を消したのか? 本部長の椎野勝巳をはじめ、椎野と敵対するキャリア組の冬木警務部長、準キャリアの堀川警備部長、叩き上げの藤巻刑事部長など、県警幹部の利害と思惑が錯綜する。ホステス殺し、交通違反のもみ消し、四年前の選挙違反事件なども絡まり、解決の糸口がなかなか掴めない……。
出版作をすべて読了している数少ない作家さんの最新作ということで即日手にしました。しかも、久々の警察モノと言う事で期待せずにはいられません。

信頼の厚い刑務課長の失踪とそれによって巻き起こる県警本部での内紛。阪神大震災という大事が発生している中で、男達は己のプライドのため、出世への足がかりとするため心理戦を展開し、刑務課長の失踪を追います。それぞれ微妙に思惑が異り、自分だけの情報を得ようと動きまわる様は滑稽でもあり、でも失敗の許されない世界で生きてゆくプレッシャーも感じ取ることが出来ました。

ただ惜しいのは、殆んど全ての登場人物があまりに自分勝手なこと。まともと思える人間がほとんど登場しません。唯一堀川くらいでしょうかか。でも準キャリアとしての板ばさみにあっているようでもあり・・・。どの人も上司にしたくないと思わせる人物ばかりであって、感情移入しにくいところがつらい。あと、「半落ち」の焼き直し版のような印象も受けました(半落ちよりもずっとずっと面白いですが)。

もう一つ。なぜ阪神大震災は裏の舞台として持ってきたのか。警察の崩壊と再生を阪神大震災前後の神戸と重ねたかったのか。それにしては本文中の描写が少ないし、対比の妙を感じ取ることは出来ませんでした。2つの出来事の間で揺れる刑事としての矜持も感じられませんし、あまり意味がなかったような気もしています。

とは言っても最後まで楽しく読みきることは出来ました。次作はいつになるんだろうと早くも待ち遠しいです。警察版「クライマーズ・ハイ」のようなものを書いてくれないかなぁ。

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【みなさまのご意見】
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「ルパンの消息」横山秀夫

ルパンの消息タイトル:ルパンの消息
著者  :横山秀夫
出版社 :カッパノベルス
読書期間:2005/05/23 - 2005/05/26
お勧め度:★★★★★

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「昭和」という時代が匂い立つ社会派ミステリーの傑作!
平成2年12月、警視庁にもたらされた一本のタレ込み情報。15年前に自殺として処理された女性教師の墜落死は、実は殺人事件だった−−しかも犯人は、教え子の男子高校生3人だという。時効まで24時間。事件解明に総力を挙げる捜査陣は、女性の教師と死と絡み合う15年前の「ルパン作戦」に遡っていく。「ルパン作戦」−−3人のツッパリ高校生が決行した破天荒な期末テスト奪取計画には、時を超えた驚愕の結末が待っていた・・・・・・。
昭和の日本を震撼させた「三億円事件」までをも取り込んだ複眼的ミステリーは、まさに横山秀夫の原点。人気絶頂の著者がデビュー前に書いた"幻の処女作"が、15年の時を経て、ついにベールを脱いだ!
本作は、1991年に第9回サントリーミステリー大賞佳作を受賞した作品であったが、当時は刊行されることはなかった。7年後の1998年に短編「影の季節」で第5回松本清張賞受賞、その後出す本出す本売れに売れて人気作家となったわけだが、本作が91年に刊行されていたらもっと早く世に名が知れ渡っていたことだろう。

長い間物書きを職業としていたとはいえ、本作は長編小説の処女作。最初から最後まで処女作ならではの瑞々しさ、初々しさが感じされる。そして、恐れを知らない大胆な設定からはスカッとした心地よさを感じる。

話は大きく分けて現在(1990年)と過去(そこから15年前=1975年)に分かれているが、メインは15年前に3人が実行した「ルパン作戦」だ。当時の記憶を辿りながら物語は進んでいく。平凡な高校生活に飽き、それを破ろうと時間を掛け練り上げた計画。傍からみれば他愛もないものだが、ちょっとしたらスリルを求めて行動を取る気持ちは理解できる。老獪で暗さを持った人物を描くのが巧いと思っていた横山さんだが、若者も描けるのだと新たな発見をして得した気分だ。

現在の部分では、迫る時効へ向けての攻防をスピード感を持って読ませてくれる。コイツが犯人?いや違うのか・・・。ページを捲る度に状況が二転三転。いろんな要素を詰め込みすぎの感があるが、それぞれの人物が深くじっくり描きこまれており、この小説で力の限りを尽くそうという横山さんの心意気が伝わってくる。

横山さんにとっては当時刊行されていれば、それはそれに越したことはなかっただろう。しかし私は正直今読めてよかったと思う。改稿後記を読んで、その気持ちを強くした。

【関連ページ】

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「出口のない海」横山秀夫

出口のない海タイトル:出口のない海
著者  :横山秀夫
出版社 :講談社
読書期間:2004/11/29 - 2004/11/30
お勧め度:★★★★

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甲子園の優勝投手、並木浩二は、大学入学後、腕の故障を克服すべく、"魔球"の完成にすべてをかけていた。しかし、時代は並木の夢を、大きな黒いうねりの中にのみこんで、翻弄する…。愛する人や家族に別れを告げ、運命を託す"回天"特攻隊。そこで並木を待ちうけていたのは、真っ暗な"出口のない海"だった…。

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「半落ち」から始まった「横山秀夫強化月間」もとうとうラストとなりました。目標通り、11月中に横山さん全巻制覇が出来ました(感想を書くのが遅れましたが)。いやー、よくここまでたどり着いたと感慨深いものがあります。ラストを飾るのは今年8月に刊行された最新作「出口のない海」。これまでの作品とは一線を画し、"戦争"をテーマにあつかっていると聞いて「なぜ?」と思いましたが、'96年にマガジン・ノベルス・ドキュメントから発表された同名作を全面改稿した物と聞いて納得。

横山さんの書く戦争モノということで、戦争の悲惨さや暗さが詳細に書かれていると構えて読み始めましたが、戦争に運命を翻弄される人間の内面を描くことに主眼が置かれ、戦争の描写はそれほどでもなかったので、さくさくと読み進めることが出きました。

いつもながら心の葛藤など心理描写が巧みです。明日という日が来るのは当たり前として生きてきた人間に突きつけられた「死」の宣告。並木は生きることの意味と死ぬことの意味を必死に探し、もがき苦しむ。寄せては返す感情の波。そして、とうとう"回天"へ搭乗。並木が"回天"に乗り込んだときは自分がその場にいるかのような感覚を味わいました。

"回天"についてほとんど知識はありませんでした。"神風特攻隊"のほうが世間にも認知されていると思います。並木の出した死ぬことの意味「俺はな、回天を伝えるために死のうと思う」。「回天を世に伝えること」、これは横山さんが本作で一番伝えたかったことと思います。そして、本書を読み終えて、私は"回天"のこと、"回天"に乗って亡くなられた方のことを忘れないだろうと思います。

淡々と進む物語なのに、考えさせられることはとても多い本でした。

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【みなさまのご意見】


「クライマーズ・ハイ」横山秀夫

クライマーズ・ハイタイトル:クライマーズ・ハイ
著者  :横山秀夫
出版社 :文藝春秋
読書期間:2004/11/22 - 2004/11/25
お勧め度:★★★★★

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北関東新聞の古参記者、悠木和雄は、同僚の元クライマー、安西に誘われ、谷川岳に屹立する衝立岩に挑む予定だったが、出発日の夜、御巣鷹山で墜落事故が発生し、約束を果たせなくなる。一人で出発したはずの安西もまた、山とは無関係の歓楽街で倒れ、意識が戻らない。「下りるために登るんさ」という謎の言葉を残したまま−。未曾有の巨大事故。社内の確執。親子関係の苦悩・・・・・・。事故の全権デスクを命じられた悠木は、二つの「魔の山」の狭間でじりじりと追い詰められていく。(帯より)

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「半落ち」以来、久しぶりの長編小説。今ひとつだったからなぁ、「半落ち」。今回はどうだろうと半信半疑で読み始めましたが、冒頭から一気に本にのめりこんでしまいました。熱くて臭い人間ドラマです。話の中心は3つあって、一つ目が日航機事故、二つ目が父と息子の関係、三つ目が社内抗争となっています。

その中で核となっているのは、日航機墜落事故とそれにまつわる新聞社内の描写で、さすがに事件当時群馬県の新聞記者をしていただけあって、とても緻密で濃密。大久保清事件あさま山荘事件といった「過去の栄光」に縋っている上役vsそれを知らない若手。新鮮な記事を入稿しようと締め切りを延ばして対応する編集局vs配送所へ新聞を時間通りに届けなくてはならない販売局。デスクvs現場記者。新聞社の内情は全く知りません。が、数々の対立をベースとした限界状態での葛藤は、その苦しんでいる息遣いまで聞こえてきそうなほどです。悠木の行動や決断には、やや共感しかねる部分もありましたが。

横山さんの本を読んだ感想で毎度書いていることだけど、横山さんは組織の中の個人を描き出すのがとても巧い。組織の一員として生きるのか、個人を重視して生きるのかのジレンマ、そう誰でも一度は考えるであろう部分を克明に描きあげてゆくのです。

あっと驚くどんでん返しもないし、謎解きも全くない長編小説ですが、読み応えはたっぷり。読了感も保証しますので、一度読んでみてはいかがでしょうか。

付記:
Web本の雑誌」で知りましたが、横山さんは昨年1月に心筋梗塞で2週間、昨年7月に貧血で3週間入院されたそうです。働きすぎですよ、横山さん。体調に注意して、ペース落としてでも長く書き続けていただきたいものです。

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「臨場」横山秀夫

臨場タイトル:臨場
著者  :横山秀夫
出版社 :光文社
読書期間:2004/11/16 - 2004/11/17
お勧め度:★★★

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「終身検視官」の異名をもつ捜査一課調査官・倉石義男をキーマンとした連作短編集。検視官(事件現場の調査を行い、自殺・他殺・事故等の判断を下す)であって検死官(死体を解剖し、死因を特定する)ではないので、お間違えなきよう。

一つ前に読んだ「看守眼」がやや物足りなくて不満だったんだけど、本作でその不満も吹っ飛びました。警察を舞台にした作品は横山秀夫の真骨頂ですね。すごくいい。警察モノ=横山秀夫と言っていいです。検視官・倉石は、明け透けな言動と上司を上司を思わない態度から疎んじられているけれど、長年の鑑識で磨いた洞察眼と花や虫にまで及ぶ豊富な知識で自殺と思えるものを他殺に、どうみても殺人事件というものを自殺と判定して行きます。またそれがズバズバと当たるのです(小説なので当然ですが)。

これまでの横山秀夫の作品の多くと同様に各短編の語り手はあくまでも別の人物とし、こんな倉石を各編で要所に登場させるに留めていることが、返って倉石のキャラクターと物語のストーリーが強く印象付けられています。倉石を主人公とすることでも一冊書けちゃうんだから、ある意味もったいない使い方ですよね。倉石のキャラは、「第三の時効」に出てきた捜査一課各班の班長・朽木、楠見、村瀬の三人と肩を並べるくらいなのに。

それにしても倉石調査官、格好良いです。仕事への誇り、どんな小さなことにも妥協しない姿勢、時折見せる情の厚さ。こんな人、どこかにいないかな。上司にいたらいいのになぁ。自分がそうなればいいんじゃ…という突っ込みは入れないで下さい、、、。

いつだったかの感想でも書いたけど、同じ主人公を使ったシリーズを作れないのかなぁと。無理して続ける必要はないと思うけど、短編一作で埋もれさせてしまうのはもったいないキャラなんですよ。そこのところ横山さんはどのように考えているのだろうか、知りたいところです。

お気に入りは「餞」と「黒星」。

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赤い名刺
若い女性の首吊り死体が発見された。倉石の下で働く捜査一課・一ノ瀬和之は、その被害者がかつて不倫関係にあった女性だと知り、慌てふためく。

眼前の密室
東洋新聞記者・相沢靖之は、事件の経過を聞きだすために夜討ちを狙って捜査一課係長・大信田警部の家を張っていた。しかし、ほんの少し目を放した隙に、その家の内部では殺人が発生していた。不審人物は入室しなかったのだが・・・。

鉢植えの女
一ノ瀬は異動の内示を受けていたが、倉石に言い出せずにいた。そんな折、45歳女性と33歳男性の不倫心中死体が発見された。倉石は、この現場を「卒業試験」として一ノ瀬に任せ、自分は密室の書庫内部で発見された死体の検視に向かう。


もうすぐ定年を迎える刑事部長・小松崎周一。彼の元には長年「霧山郡」とだけ署名された手紙が送られ続けていたが、去年からぷっつりと途絶えた。それが誰なのか、小松崎は倉石に相談してみた。


司法研修に来ていた斎田梨緒が自殺した。彼女を指導していた三沢と浮島は動揺する。彼ら二人はそれぞれ梨緒に対して歪んだ思いを寄せていたのだ。

真夜中の調書
科捜研の友人の助けを借り、団地の先生殺しをスピード解決した刑事・佐倉鎮夫。友人を招き祝杯を挙げるはずが、倉石の「DNAをちゃんとやれ」の一言によってかき回される。

黒星
婦警・小坂留美は男運に恵まれない。仲のよかった同期三人と同じ機動隊員を巡って争ったが破れ、友人関係も無残に崩れ去った。主婦となった元婦警・町井春江から来た久しぶりの電話で、再びそのことを思い出し気が滅入る。しかし、その春江が・・・。

十七年蝉
不良上がりの警察官・永嶋武文は、季節外れの人事異動で調査官心得となった。調査官の運転手をしならがら検視のノウハウを勉強する調査官心得は、本来警部級が付くポストなのだが、倉石が引っ張ったと言う。なぜ自分が?そんな中、不良少年射殺事件が発生。永嶋は、倉石から野次馬に知り合いがいないか見て回れと指示される。

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【みなさまのご意見】
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「看守眼」横山秀夫

看守眼タイトル:看守眼
著者  :横山秀夫
出版社 :新潮社
読書期間:2004/11/13 - 2004/11/15
お勧め度:★★★

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6編の短編を収めた短編集。それぞれの主人公は、警察事務職員、フリーライター、家裁調停委員、警務部情報管理課課長補佐、地方紙の元記者で、現在は編集局整理部内勤社員、知事公室秘書課課長とバラエティに富んでいます。といえば聞こえが良いですが、まとまりがないと言った方が正しいような・・・。

今まで連作短編集「顔 FACE」、「影踏み」はもちろんのこと、「陰の季節」、「深追い」、「第三の時効」では舞台が、「真相」は犯罪の当事者の事件後という、一冊を通してのテーマがあります(と勝手に思ってます)。今回はどうも寄集め感が否めないのです。だからじゃないと思うのですが、はっとするところはあるものの、全体としては今ひとつでした。他の作家さんだったら及第点かもしれませんが、横山さんに求めているのはもっと上のレベルなのです。贅沢な注文でしょうか。

そんな中で一番よかったのは「秘書課の男」かなぁと。自分のことばかり考えていませんか、という問いを横山さんからもらったような気がしました。

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看守眼
「山野井のやつ、日に日にギラギラしていきやがった」看守歴29年の「穴倉刑事」だからこそ見抜けた失踪事件と殺人事件の真相とは?

自伝
3人で立ち上げた自伝執筆集団においしい仕事が舞い込んだ。家電量販店会長・兵藤興三郎の自伝で、その報酬は300万。他の二人が面接で落とされ、自分に番が回ってきて喜んだ只野であったが、兵藤の言葉に凍りつく。「わしは人を殺したことがある・・・」

口癖
家裁調停委員・関根ゆき江の前に現れたのは、かつて同じ団地に住んでいた母娘だった。以前はきれいな服で着飾っていた母娘であったが、今は面影もない。知人の担当をしてはいけない規則であったが、ゆき江は好奇心から担当を引き受けてしまう。

午前五時の侵入者
県警ホームページが改ざんされた。真っ黒な画面と意味不明なフランス語の赤い文字。ホームページ担当である警務部情報管理課課長補佐・立原義之は、アクセス履歴を手がかりに、犯人を追う。

静かな家
写真展の案内広告を誤って開催期間が過ぎてから掲載してしまった高梨透。謝罪のため、写真家・須貝清志の家を訪ねたが不在、連絡先を残して帰宅した。程なくして明日の新聞に謝罪広告を載せろと怒りの電話が。再度謝罪に訪れたがまたしても不在、高梨は仕方なく謝罪広告を載せた。だが、事はそれだけでは終わらなかった。10日後、自宅居間で須貝の死体が発見されたのだ。

秘書課の男
最近オヤジが冷たい気がする。知事公室秘書課課長・倉内忠信は、そう感じていた。倉内は知事周辺の人物にそれとなく聞きまわり、知事が倉内のことを「見損なった」と言っていたことを知る。何か嫌われるようなことをしただろうか。疑心暗鬼の倉内は、政策調査担当・桂木敏一の陰謀ではないかと疑心暗鬼となる。

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【みなさまのご意見】


「影踏み」横山秀夫

影踏みタイトル:影踏み
著者  :横山秀夫
出版社 :祥伝社
読書期間:2004/11/10 - 2004/11/11
お勧め度:★★★

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「ノビ師」真壁修一を主人公とした連作短編集。「ノビ師」とは、深夜家人が寝静まった住宅に盗みに入る泥棒のこと。自分が泥棒だったらそんな危険なことはしたくないなぁ、もちろん泥棒などしませんが。主人公だけじゃなく、刑事や他の泥棒なども他の話に出てくるので、なんだか長編のような雰囲気。かつて法曹界を目指していた秀才でもあるこのノビ師が探偵役となり、毎回何らかの謎解きが行われていきます。

これまで組織の暗部を徹底的なリアリティで暴き出してきた横山さんですが、今回は真壁修一の中耳に双子の弟・哲二が宿るというオカルト的な設定。しかし、これが他の仕事についても成功するであろう真壁が、泥棒家業を続けている理由ともなっています。どうしてこうなったのかの詳細は本文を読んでもらうとして、この設定を奇異に感じさせないのはさすがです(最初はちょっと戸惑いましたが)。お勧めは、「使徒」と「行方」かな。

ラストで物語は一応の完結をみますが、まだ続きそうな雰囲気も。ぜひぜひ続編を長編で書いていただきたいものです。

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消息
盗みに入った家の妻は、夫を殺そうとしていた!?その一件で住居侵入により捕まった真壁。二年間の服役を終え出所した真壁は、その事件を再調査する。

刻印
警察官の死体が側溝で見つかった。泥酔していた警察官の足取りから犯人を追う。

抱擁
かつての恋人だった久子が、勤務先の保育園で積立金消失事件の犯人として疑われることに。真壁は、事件の状況から隠された真実を暴き出す。

業火
盗人狩り。雁谷界隈の泥棒が襲われる事件が続き、ついに真壁も襲われる。誰が何の目的で?そして、本当に狙われているのは誰か?

使徒
塀の中である泥棒から「サンタクロース」の依頼をされた真壁。その泥棒もある人から依頼を受け、5年間サンタクロースを続けていたという。依頼者とは一体?

遺言
宵空きの黛明夫が死んだ。今はの際、真壁の名前を呼んだという。そう聞いた真壁は、死を伝えようと黛の唯一の肉親である父親を探し始める。

行方
突然真壁を訪ね、救いを求めた久子。見合い相手の兄にあとをつけられているという。真壁は、その男の行方を追うがなかなか見つからない。そんな中、久子の住むアパートから火の手があがる。

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【みなさまのご意見】


「真相」横山秀夫

真相タイトル:真相
著者  :横山秀夫
出版社 :双葉社
読書期間:2004/11/05 - 2004/11/08
お勧め度:★★★

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以前のエントリで「今回購入したのは短編ばかりですべて警察モノ」というようなことを書きましたが、少し違っていました。本作品は、警察内部を描くのではなく、過去におきた殺人事件の関係者を描いた5編から成る短編集となっています。

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真相
自慢の息子を殺されて10年、ようやく犯人が捕まった。未だ現実として受け入れることが出来ない。そんな中、犯人の口から殺人事件の「真相」が語られる。

18番ホール
全てを捨て村長選挙に出馬することになった樫村には、どうしても勝たなければならない理由があった。楽勝ムードが一変、劣勢の報を聞いた樫村は、疑心暗鬼からある行動に出るが・・・。

不眠
勤めていた会社でリストラとなり、新薬の人体実験のアルバイトをする山室。実験のせいで不眠となった山室が早朝に目撃したのは、同じ団地に住む男の車だった。

花輪の海
大学時代の空手部合宿は、"死の合宿"となってしまった。12年ぶりに再会した同級生達により、真実が語られる。

他人の家
「養子にならないか」行き所の無い元犯罪者に差し伸べられた救いの手。断る理由が見当たらない。しかし、その裏には隠された秘密が・・・。

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今回の5編、どれも暗くて重い内容。主人公たちが後ろめたい過去を持っていること、最後に救いが見られないことが要因ですね。ただ、それぞれに考えさせられることが多いです。表題作「真相」では「被害者及び犯罪者の人権」、「不眠」では「リストラ」がテーマと成っており、まさに現実社会で考えねばならない問題ですね。

どれもこれも目の前に情景が浮かび上がってくるほどのリアリティ。テンポよく畳み掛けてくるような文章が、読者の緊張感も高めていきます。「半落ち」から最新作「出口のない海」まで数ヶ月毎にコンスタントに作品を出し続けている横山さん、外れが全くないのは驚異的です。でも、次はもっと明るい作品が読みたいなぁ。

横山秀夫強化月間も中盤に差し掛かりました。今月中に全作品を読了する予定ですが、んー、間に合わないかも。残りはあと5冊。

【みなさまのご意見】
deepsixさん
tomamemoさん
酒とBlogの日々さん
三匹の迷える羊たちさん('06/01/23追加)
たりぃの読書三昧な日々さん('06/07/25追加)
たこの感想文さん('06/10/26追加)
りょーちの駄文と書評さん('06/12/02追加)
脳内TraPさん('07/01/14追加)


「第三の時効」横山秀夫

第三の時効タイトル:第三の時効
著者  :横山秀夫
出版社 :集英社
読書期間:2004/11/01 - 2004/11/05
お勧め度:★★★

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警察モノを多数手がけてきた横山さんですが、おそらく初めて捜査畑の刑事を全編通して主役に据えた作品じゃないかな。F県警捜査一課強行犯係に所属する刑事たちが主役で、それぞれ全くタイプの異なる優秀な班長に率いられた3つの班が、互いにライバル心剥き出しで捜査に当たっているというのが基本設定となっています。

1班班長・朽木は、緻密な分析・推理で犯人をじりじりと追い詰めていくタイプ。2班班長・楠見は犯人を捕らえるためなら卑劣な罠でも平然と使うことの出来る謀略家タイプ。3班班長・村瀬は現場を一目みただけで直感的に犯人像を描くことの出来る天才肌タイプ。この3人によって、F県警は検挙率ほぼ100%という輝かしい成績を持っているのけど、上司の命令には背くし、お互い仲が悪いしで扱いにくいことこの上ない。上司としては優秀な部下を持って問題を解決してくれれば、自分の点数が上がるのだろうけど、こんな奴らだったら、いくら優秀でも絶対に部下には持ちたくないですな。

相変わらず巧みな人物描写、作品プロットです。さらに今回はミステリを強く意識して書かれているようで、あおちゃん好みの作品でした。短編ですが、内容はとても充実していて、一つを読み終えただけで長編を読み終えた時のような充実感を得られること間違いなしです。

お気に入りは表題作「第三の時効」。"第三の時効"の存在自体がトリッキーなのに、その裏に大どんでん返しが待っていようとは・・・。脱帽です。

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沈黙のアリバイ
物的証拠の上がらぬまま、自白を唯一の証拠とする強盗殺人犯の裁判が始まった。取り調べが難航しただけに、朽木らも裁判の展開に微かな不安を抱いていた。男たちが見守るなか、不安が的中、被告は突如無罪を主張し、隠していたアリバイを申し立てる。

第三の時効
タクシー運転手を殺害し、その妻をレイプして逃亡した犯人。いよいよその時効が迫ってきた。逃走中に一度被害者宅に電話してきた容疑者。逃亡中に海外へ渡航しており、その分時効が伸びている。その"第二の時効"の存在を容疑者が知らなければ、"第一の時効"が切れた時に再び電話してくるに違いない。捕まえるのはその時・・・と、刑事達は被害者宅に網を張った。

囚人のジレンマ
それぞれ捜査がクライマックスを迎えつつある3つの事件と、それを追う3つの捜査班。上司を上司とも思わない班長達の指揮に疲れた田畑課長は、記者の一言から不意に部下へのある疑念が首をもたげる。

密室の抜け穴
村瀬班長が脳梗塞で倒れてしまうという緊急事態の最中、班長代行していた東出は、他課の応援まで頼んで包囲していたマンションから容疑者を取り逃がすという失態を演じてしまう。厳重な監視の目を盗み、容疑者はどうやってマンションを脱出したのか?

ペルソナの微笑
隣県で発生したホームレスの毒殺事件に色めき立つF県警。実は、かつて同じ青酸カリによる殺人事件を迷宮入りさせた苦い記憶がF県警にはあったのだ。奇妙に似通った事件の様相に不審を抱く朽木。またしても犯人は子供を道具に使ったのか?

モノクロームの反転
一家3人殺害という重大事件が発生し、1班と3班が共同で担当することになった。優秀な2つの班が協力しすればいちだんと大きな力を発揮する、という田畑課長の思いとは裏腹に、現場でも激しく先陣争いを繰り返す両班。激しい競争の末、それぞれ大きな手掛かりを発見するが、協力しようという気配はカケラも見えない。

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【みなさまのご意見】


「深追い」横山秀夫

深追いタイトル:深追い
著者  :横山秀夫
出版社 :講談社
読書期間:2004/10/28 - 2004/11/01
お勧め度:★★★

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とある地方都市に存在する三ツ鐘署を舞台とした7編の短編集。警察を舞台としながら殺人を追う刑事を主役としないのは、デビュー作「陰の季節」と同じ。今回の主人公は順に、交通課事故係、刑事課鑑識係、刑事課盗犯係、警務課係長、生活安全課少年係、三ツ鐘署次長、会計課長となっています。

これまでの作品で警察組織の闇の部分を鋭く切り込んできた横山さんですが、今回は個人に着目した人間味あふれる作品になっていると思います。あいかわらず巧いっす。これだけ警察モノを書いていれば、内容が似通ってくると思うのだけれど、そのようなところは全く無いですね。どこまで引き出しを持っているのだろう。

警察モノが巧いのはわかった。こうなると警察モノ以外も読んでみたくなりますね。先日買ってきた本(短編ばかり)は全部警察モノっぽかったなぁ。未入手の「クライマーズ・ハイ」と「出口のない海」は帯を見る限り、警察モノじゃないような気がするのですが・・・。未読本については、先入観を持たないためになるべく情報を入れないようにしているんで、よくわからんのです。

「横山さん強化月間」はようやく中盤くらいかな。今月中にはすべて読み終えたいと思ってます。

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深追い
交通課事故係主任・秋葉和彦は事故現場でポケベルを拾った。交通事故で死んだ男が持っていたものだ。男の妻に返そうと思っていた矢先、そのポケベルが鳴った。「コンヤハ オサシミ デス」夫の死後もポケベルにメッセージを入れ続ける妻の心境は如何なるものか。

又聞き
刑事課鑑識係で日々鑑識写真を焼き続ける三枝達哉。小学二年生の時に海で溺れ、救助に向かった大学生一名が死亡、もう一名の大学生にに助けられた経験を持つ。大学生の命日には必ず線香をあげに訪れる三枝が、ある年の命日に見た一枚の写真。事故の一時間前に撮られた写真というのだが、一つの疑問が浮かび上がる。

引継ぎ
名物空き巣「宵空きの岩政」が突然の引退宣言をした。刑事課盗犯係主任・尾花久雄が、その親の代から追っていた空き巣だ。年に一度の「盗犯検挙推進月間」に、その岩政の手口に類似した空き巣事件が発生、目撃情報も寄せられた。岩政は引退したはずではなかったか?推進月間なのにいまだ検挙数ゼロの尾花は、岩政の行方を追う。

訳あり
警務係長・鈴木郁夫は困り果てていた。まもなく定年退官する巡査長の再就職先がどうしても見つからないのだ。そんな中、刑事二課長が女のマンションに入り浸っているというタレ込みが入る。刑事二課長の身辺調査を依頼された鈴木は、自身の仕事の合間を縫い、極秘裏に調査を開始する。

締め出し
生活安全課少年係・三田村厚志は商店街夏祭りの"後始末"をしていた。補導・検挙した少年達の取調べだ。ふんぞり返り生意気な言葉を口にする少年に一撃を食らわそうとしたちょうどその時、強盗殺人事件を告げる無線が鳴った。住宅団地のローラ捜査に借り出された三田村は、公園で休憩している最中に奇妙な言葉を口走る老人と出会う。

仕返し
ホームレスの死体が公園で発見された。いつも署に顔を出していた"ポンちゃん"というホームレス。病死との所見だったが、ポンちゃんの足取りを追ううち、警察署の近くでの目撃情報を得る。

人ごと
627円と花屋の会員証。それが届けられた財布の中身だった。会計課長・西脇大二郎は会員証から落とし主を追うが、持ち主は財布の中身とは似つかわしくないマンションに住む老人だった。

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【みなさまのご意見】
今日も生きてます。さん
tomamemoさん
co-butaさん
私の時間さん
転石庵 日乗さん
本と音楽と…さん
booksjpさん('05/06/14追加)
たこの感想文さん('05/10/16追加)
しんの覚え書さん('05/11/28追加)
37.4℃さん('07/09/03追加)
ぱいんブログさん('08/02/28追加)