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「殺人症候群」貫井徳郎

殺人症候群タイトル:殺人症候群
著者  :貫井徳郎
出版社 :双葉社
読書期間:2008/08/25 - 2008/08/28
お勧め度:★★★

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警視庁内には、捜査課が表立って動けない事件を処理する特殊チームが存在した。そのリーダーである環敬吾は、部下の原田柾一郎、武藤隆、倉持真栄に、一見無関係と見える複数の殺人事件の繋がりを探るように命じる。「大切な人を殺した相手に復讐するのは悪か?」「この世の正義とは何か?」という大きなテーマと抜群のエンターテインメント性を融合させた怒涛のノンストップ1100枚。

感想はそのうち・・・。


「ミハスの落日」貫井徳郎

ミハスの落日タイトル:ミハスの落日
著者  :貫井徳郎
出版社 :新潮社
読書期間:2007/07/26 - 2007/07/27
お勧め度:★★★

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突然の呼び出しは、面識のない相手からだった。名前だけなら誰でも知っている会社の創業者で財界の実力者。不可解な思いを抱きつつ訪問すると、年老いた紳士は、ある事件について語り始めた。私の母が関わっていたとされる、三十年以上も昔の、信じがたい密室殺人の真相を……。表題作他、五つの都市に響き渡る、五つの悲鳴。

海外の都市を舞台とした五編の短編集。表題作「ミハスの落日」他、「ストックホルムの埋み火」「サンフランシスコの深い闇」「ジャカルタの黎明」「カイロの残照」が収録されています。

どの編も海外が舞台、男女の心のすれ違いを描いているということが共通点でしょうか。また、どの編もラストにあっと驚くどんでん返しが待っているのですが・・・、ちょっと苦しかったり、わかりにくかったりと気持ちが乗り切れませんでした。「わかりにくい」というのは、自分の読解力が多分に影響していると思いますが。

以下、短評。

■ミハスの落日
面識のない大富豪から呼び出されてミハスの町を訪れた青年が、過去密室殺人事件の真相を聞かされるのだが・・・。正直、こういうことが起こる確率は相当低いと思うのですが・・・。出だしでいきなり苦しいスタート。

■ストックホルムの埋み火
レンタルビデオ屋で働く青年が、常連客の美女に恋心を抱き、ストーカー行為に及ぶのだが・・・。いよいよ真相が・・・というところで何がなにやらわからなくなってしまいました。が、結構驚きました。

■サンフランシスコの深い闇
保険会社の調査員が、保険金詐欺の疑いがある案件を調査。夫が立て続けに三人死んでいるという・・・。調査員と刑事のやりとりが、軽妙で面白い。

■ジャカルタの黎明
夫の借金のせいで売春を始めた女性に、夫殺しの疑いがかけられて・・・。犯人、途中で読めました。

■カイロの残照
夫を探すという米国人女性客を案内することになった観光ガイドが、調査の果てにたどり着いた真実は・・・。非常に残酷な結末ですが、これが一番面白かった。

+++++

【みなさまのご意見】
こんな夜だから本を読もうさん
粋な提案さん
ナナメモさん
こんな一冊さん
たこの感想文さん('07/10/03追加)


「空白の叫び」貫井徳郎

空白の叫び 上空白の叫び 下タイトル:空白の叫び
著者  :貫井徳郎
出版社 :小学館
読書期間:2007/02/22 - 2007/03/01
お勧め度:★★★★

上巻 → [ Amazon | bk1 | 楽天ブックス ]
下巻 → [ Amazon | bk1 | 楽天ブックス ]


ふつうの少年がなぜ人を殺すのか。世の中への違和感を抱え、彼らは何を思い、どんな行動に出るのか―やがて殺人者になる三人の心の軌跡をたどった戦慄のクライム・ノベル。(上巻)
殺人者となった少年は更生できるのか。後悔はしていない。罪を償ったとも思っていない―再スタートを切った三人の挫折を鮮やかに描き出す新機軸ミステリー。(下巻)

上下巻合わせて1,200ページ弱の超大作。

殺人を犯してしまった3人の14歳の少年の目線で話は展開していきます。これまで読んだ少年犯罪モノは、重いテーマであってもラストに一筋の光明が見えるものが多かったのですが、この本はただひたすらに暗く、加害者には何の同情も沸きません。加害者の心理とそれを受け入れる世の中の道理を描いています。細かいところまで描写が行き届いていて、暗いながらも読む手は止まりませんでした。ただ、読んで何かが得られたかというと、ちょっと・・・。

三人の少年とも背景に犯罪に走る要素を持ち合わせています。一人目は、己の凡庸さを嫌悪し、常に何事かに対して苛立っている久藤美也。そんな彼の前に訳知り顔の新米教師・理穂が現れ、久藤は暴発してしまいます。

二人目は、頭脳明晰、容姿端麗、親は金持ちという、傍目から見れば何不自由のない少年・葛城拓馬。彼は、同じ屋敷で暮らす使用人の息子・英之のわがままな言動や態度に苛立ちを感じています。とある挫折が引き金となって、拓馬は英之に暴力を振るってしまいます。

三人目は、実の母から養育を放棄され、祖母と伯母に育てられた神原尚彦。経済的にも貧しく、そんな自分の境遇に不満を持っており、自分のことを考えずに遊び回る母親に怒りを感じています。祖母の死後、遺産を巡る伯母と母親の醜い争い、母親の伯母に対するひどい仕打ちを目にして、尚彦の怒りはとうとう爆発してしまいます。

三人の少年が殺人を犯してしまうまで、細かい部分まで描かれていますが、誰一人に対しても同情や共感の念は起こりませんでした。そのような状況まで追い込まれていない、といえばそれまでですが、部分的に心情を理解できても、「それで殺人を犯してしまうなら、みんな人を殺しちゃうよ」と思わずにはいられませんでした。ただ、この詳細な描写は、それぞれの変化と比較すると面白いものがあります。

三人は同じ少年院に収容され、同じ年ということもあって、お互いに意識しあいます。少年院での厳しい日々。極限状態で三人の裏の顔が徐々に見えてきます。三人の中で一番変わったのは、神原でした。普通のまじめな優しい少年に見えた神原は、自分は何も悪くなく、悪いのは自分以外の人すべて、という考えの持ち主でした。それでいて、自分の力でどうにもならないときは、平気で媚を売り、利用することに何も感じません。

少年院を出た三人に待ち構えていたのは辛い現実でした。真面目に暮らそうとしても、嫌がらせで仕事を辞めざるを得なくなったり、対人関係を壊されたり、それでなくても狭い世界をより狭められてしまいます。徐々に追い詰められていく三人は、ある計画を遂行するため、再会を果たします。

彼らに待ち構える未来は残酷でした。詳細までは書きませんが、自分が周りに対して行った行動(悪意があるにせよ、ないにせよ)が、すべて自分に跳ね返ってきました。やはり、自己中心にしかものを考えられない神原には最悪の結末が・・・。

三人が再会してから、物語の展開がスピーディーになり、俄然面白さが増しました。ただ、では結局犯罪を犯した少年たちをどのように扱っていけばよいのか、本当の意味での「更正」って何なのだろうか、と考えると、やはりどうしたらよいのかわからないわけで・・・。

少年たちは自分が犯した罪を悪いとなど思っていません。「更正」させるためには、それが悪いことであるとわからせることが、まず必要なのでしょう。そのためには、親身になって教えを説くことも犯した罪と同等の罰を与えることも同じことである、とあまり考えたくありませんが、そういう結論に達してしまいました。

+++++

【みなさまのご意見】
ナナメモさん
ぼちぼちさん


「愚行録」貫井徳郎

愚行録タイトル:愚行録
著者  :貫井徳郎
出版社 :東京創元社
読書期間:2006/12/16 - 2006/12/19
お勧め度:★★★

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ほら、人間という生き物は、こんなにも愚かで、哀しい。数多のエピソードを通して浮かび上がる、人間たちの愚行のカタログ。『慟哭』『プリズム』に続く、第三の衝撃。

第135回直木賞候補作。このときの直木賞受賞作は、「風に舞いあがるビニールシート」と「まほろ駅前多田便利軒」でした。

一家四人を殺害した残忍な殺人事件を追うルポライターが、被害者夫婦と過去に縁のあった人を訪れてインタビューするという構成で、徐々に夫婦の人間像を炙り出していきます。宮部みゆき「理由」と同じ手法です(その他に恩田陸「ユージニア」なども同じ手法らしいが未読)。

生きている人間が死んだ人間を遠慮なく語り、とことん人間の嫌な面、汚い面を描き出しています。上昇志向が強いエリートたちの身勝手な欲望には虫唾が走ります。登場する大学の気質がこの通りかどうかは知りませんが、僕が持っていたイメージとはぴたり一致しました(登場する大学のOBの方、すみません・・・)。

夫と妻の生きていたころの姿が語られるわけですが、彼らの真実の姿が果たしてどちらなのか、手が届きそうでいて決して真実に手が届かないのがもどかしいです。語り手には当時の状況や現在の感情といったフィルターがかかり、180度正反対な意見が出たりして、まるで雲を掴むかの如くです。特に妻の真実の姿が捉えられませんでした。人を見下すタイプなのか、ただ天真爛漫なだけなのか。おそらく前者と思いますが。

本編の合間には、兄に対する妹の独白が挿入されています。親から虐待を受けて育った妹は、どうもこの殺人事件の犯人らしい。では一体誰なのか?どのようにして本編とつながっていくのか?と緊張感が高まります。回答ですが、なんと冒頭にありました。でも、ぜんぜん気が付きませんでした・・・。本書中で一番の愚行は、これだと思います。

結構楽しい読書だったはずなのですが、今一つ物足りなさが残ったのも事実。読後に心に引っかかるものがなかったからかなぁと思っています。

+++++

【みなさまのご意見】


「追憶のかけら」貫井徳郎

追憶のかけらタイトル:追憶のかけら
著者  :貫井徳郎
出版社 :実業之日本社
読書期間:2006/11/13 - 2006/11/15
お勧め度:★★★★

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戦後間もなく自殺した作家の未発表手記。そこに秘められた「謎」とは―?最愛の妻を事故で亡くした大学講師。失意の底にある彼をさらに翻弄する何者かの悪意。長編ミステリアスロマン。

妻を事故で亡くした大学講師・松嶋。事故は、自分の浮気が原因で妻が実家に戻っている最中に起こってしまった。以来、大学教授の義父・麻生との関係もうまくいかず、娘も麻生の元に・・・。そんな状態の松嶋の元に、50数年前に自殺した、ある作家の未発掘原稿が迷い込む。手記中の謎を解くことを条件に、手記発表の権利を手にした松嶋は、謎を追っていくのだが・・・。

「被害者は誰?」以来、二年ぶりに著者の本を読みました。「慟哭」で衝撃を受けてしばらくの間は、著作をほぼ全て読み漁っていたのですが、「慟哭」を超えるものにはなかなか出会うことが出来ず・・・。次第に手が伸びなくなっていました。

第135回直木賞にノミネートされたのを期に久しぶりに手を取ってみた本作。「慟哭」の衝撃は超えられませんでしたが、やっぱり貫井作品は面白い、と再認識しました。分厚い本ですが、一気に読めます。

手記とその謎を追う二つのパートに分かれていますが、とにかく手記部分が面白いです。各所のブログでも書かれていましたが、ここだけ独立した小説でも十分読むに値すると思いました。

戦争に行くことが出来なかったことを恥じる小説家が、戦争から帰還した軍人の代わりに尋ね人を探す。その間、何故か自分の周辺で不振な出来事が頻発します。自分は何も悪いことをしていないはずなのに。そして、とうとう最愛の人にも、謎の"悪意"の手が及んでしまいます。

この"悪意"が実はこの本の本質的なテーマ。手記を追う主人公の身にも"悪意"が襲い掛かります。首尾よく手記発表にこぎつけたものの、その手記は実は巧妙に作られた偽物だったため学者生命の危機に立たされ、手記をくれた人とも連絡がとれなくなります。

しかし、手記は全てが偽物ではなく、ほとんどは本物で一部が偽物らしいことがわかります。誰が何のために、こんな手を込んだことをして自分を陥れようとするのか・・・。尻尾をつかんだと思ってはするりと逃げられるという展開にドキドキし通しでした。

そして、明らかになる犯人。そして、その"悪意"の根っこにあるものは・・・。感動的なラストのおかげで読了感はすごくよかったのですが、犯人の"悪意"には心底恐ろしさを感じました。

+++++

【みなさまのご意見】


「被害者は誰?」貫井徳郎

被害者は誰?タイトル:被害者は誰?
著者  :貫井徳郎
出版社 :講談社ノベルズ
読書期間:2004/07/07 - 2004/07/08
お勧め度:★★★★


発表済作品3本、書き下ろし1本を集めた連作短編集。人気ミステリー作家吉祥院慶彦がその後輩で警視庁捜査一課刑事桂島からの情報を元に事件を解決に導く。

こういうミステリージャンルを"安楽椅子探偵もの = 自ら現場に赴いたり、関係者の供述を直接聞いたりはせず、事件の詳細を知っている人物から話を聞いただけで事件を解決する探偵が主人公のミステリー"と言うんですね。恥ずかしながら、知りませんでした・・・。それぞれの簡単な内容を書くと、

「被害者は誰?」
自宅の庭から白骨死体が発見されたことで、殺人容疑で逮捕された男。犯人であることは明らかなのだが完全黙秘、白骨死体が誰なのかを警察は特定できずにいた。桂島は家宅捜索により押収された手記を先輩である吉祥院の元に持ち込んでくる。

「目撃者は誰?」
ある工場の社宅アパートに住む男は、かつて片思いしていた女性と偶然アパートで再会し不倫関係となる。そんな彼らの元に謎の人物から、各々に現金2万円を要求する脅迫状が届く。男は脅迫者が向かいの棟に住む3人の男の誰かと踏んで調査を開始する。一方、先輩のマンションに招かれた桂島は、身に覚えの無い旅券を送りつけられた友人の話をしていた。その旅券額はそれほど高額ではなかったのだが…。

「探偵は誰?」
先輩の最新作は、かつて自身が体験・解決した事件を元にアレンジを加えたものだった。桂島は、誰が探偵(=吉祥院)かを当てる昼食を賭けた賭けに挑む。その小説は、芸能プロダクション所属男性モデル4人と社長、社長の娘がクリスマスイブに社長の別荘に集まり、そこで殺人事件が発生するというもの。モデル4人の中に犯人がいるのは間違いないのだが…。

「名探偵は誰?」
交通事故で足を複雑骨折し、入院してしまった先輩。そこへ、加害者である若く美しい女性が見舞いに訪れるようになったのだが、彼女の様子はどこかおかしい。どうも、先輩の病室以外に別のフロアにも用事があるようだ。やがて、一つの事件が発生する。

どれも読者を騙してやるぞ感が漂う作品です。「探偵は誰?」以外は著者の意図通り(?)、しっかり騙されました…。騙された後軽く再読してみると、やや無理がある部分もありますが、これは騙されたものの負け惜しみかもしれません、、、。一番好きなのは「目撃者は誰?」かな。

本書は今までとは全く違う、軽いテーマの作品です。このようなテーマの方が、貫井さんは上手なように思います(ん、ひどいこと言ってる?)。立て続けに「慟哭」、「プリズム」を読んでしまったため、その後は拍子抜けの作品が続いていました。久しぶりに面白いと思えた貫井作品でした。


「神のふたつの貌」貫井徳郎

神のふたつの貌タイトル:神のふたつの貌
著者  :貫井徳郎
出版社 :文春文庫
読書期間:2004/06/10 - 2004/06/14
お勧め度:★★


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「神」とは何か、神による「救い」はどのようになされるか。キリスト教的世界観を題材にしたミステリー。三部構成で主人公早乙女の12歳から42歳を描く。

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宗教がテーマということで、正直言って読み手を選びます。評価も真っ二つに分かれそう。私はちょっとだめでした。宗教にはそれほど深い興味がないため(知りたいけどよくわからない、というのが正解かも)、「まだ遠い光(家族狩り第五部)」のときに書きましたが感情移入が出来なかったからです。ミステリーとしては、ミスリードを誘う文章とか読み応えはあります(最初から引っかかってた部分がミスリードを誘っていた部分だった)。

貫井さんの作品は最初に「慟哭」、次に「プリズム」を読みました。その後に読んだ作品は、この2冊の印象を超えるものがありません。貫井さんの力はこんなものじゃないはず。今後に期待です。

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【みなさまのご意見】
たこの感想文さん
三匹の迷える羊たちさん('06/01/06追加)